具体事例

このページでは、STiPSの教員が2012年のSTiPS発足以前に行ってきた、科学と社会の関係性に取り組むための様々な活動の一部についてご紹介します。

日本ではじめて公的機関が関与するコンセンサス会議である「遺伝子組換え農作物を考えるコンセンサス会議」。遺伝子組換え技術が発達・進歩し、農作物への応用がはじまっている昨今、その安全性や効用をめぐる議論もなされています。しかし遺伝子組換え技術に対する一般市民の不安や不信感は未だ解消されていません。そのため会議では、遺伝子組換え技術から生じる人々の健康や環境への影響を科学的に示すと共に、一般市民の関心にも応えるために「市民の考えと提案」をまとめます。この会議を通じて、遺伝子組換え農作物の可能性をどう評価するか、今後研究開発を進めていく上で何を考えていくべきかについて、市民と専門家の双方向の情報交換を目指します。

■最も代表的な「参加型テクノロジーアセスメント」手法
■コンセンサス(合意)を生み出すのは、専門家ではなく「市民」
■コンセンサス(合意)を広く公表する

原子力技術に関する不毛な議論を避け、「かみあう」議論を模索する試みとして企画された「原子力に関するオープンフォーラム」。使用済み核燃料再処理工場や高レベル放射性廃棄物、また耐震問題など、原子力技術には社会での合意形成が必要な課題が多数あります。しかし複雑に絡み合う問題に対して、意見の異なる人たちが討論する場は刺激的ではあっても、意見を述べることがスムーズにいかない事態も起こりやすい。相手を尊重し、冷静に意見を交換し合う場を目指し、「原子力に関するオープンフォーラム」では大きなテーマとして「フェアネス」を掲げています。また原子力技術に関する問題について、意見の異なる人々同士のコミュニケーションのあり方を考えることも目的です。原子力を使い続けること、あるいは使い続けないことが、どういう社会を選択することになるのか、その判断材料をさまざまな観点から提示し、参加者で共有するのがオープンフォーラムです。

■異なる意見をもつ「原子力専門家同士」の対話
■場の作り方(対話のルール)から参加型で構築する
■「公平な対話の場とは何か」を追求する

地球温暖化問題に関する世界市民会議である「World Wide Views on Global Warming」。この会議は世界のさまざまな国と地域で、同じ日に、同じ問いについて、同じ情報資料に基づき、同じ手法を用いて開催されました。「World Wide Views」は2009年にコペンハーゲンで開催されたCOP15(気候変動枠組条約締約国会議)に向けて、世界の市民の声を届けることを目的に生まれました。日本では、「World Wide Views in Japan」実行委員会のもと、京都議定書採択の地・京都にて開催。地球温暖化問題に限らず、環境問題対策は私たちの生活に少なからず影響します。だからこそ政策決定がなされる前に市民も関わる場が必要なのです。

■世界44カ国3800人の市民が参加
■「同じ日に」「同じ資料」にもとづき「同じ方法」で議論
■COP15に向けたパブリックコンサルテーション

再生医療のような新しい科学技術に対し、新たな課題や対応の方向性を探る「熟議キャラバン」。専門家や政策決定者、市民活動団体、個々の市民など、多様な人々が議論を交わす場として企画されました。「熟議キャラバン」で焦点を当てたのは、政策提言ではなく、新しい科学技術の実用化を巡る「社会で議論すべき問い=アジェンダ」を提案して、社会的な議論の種をまくこと。「論点抽出ワークショップ」、「アジェンダ設定会議」を通して設定されたアジェンダは、社会調査で活用したり、学会、行政に提案されたりします。

■180枚の論点カード
■市民と専門家の協働による「アジェンダ設定」
■ネットワークによる参加型テクノロジーアセスメント