STIPSとは

STiPSとは

「公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)」は、大阪大学および京都大学の連携による人材育成プログラムです。科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業の一環として、2012年1月に発足しました。


STiPSでは、科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する研究と教育を行い、政策形成に寄与できる「政策のための科学」の人材育成を進めてまいります。


STiPSでは、科学技術や公共政策に対する社会の期待と懸念を把握するために、研究者コミュニティや産業界、政策立案者のみならず、一般の市民も含めた多様な人々や組織が、直接・間接に議論し、熟慮を深め、自ら期待と懸念を顕在化し共有していく参加・関与・熟議のプロセスが必要と考えています。

こうした「科学技術への公共的関与(public engagement)」に関する活動と教育を行うことにより、自分の専門分野の枠組みを超えて、多角的に科学技術と社会の諸問題を理解し、学問と政策・社会の間を“つなぐ”ことを通じて政策形成に寄与できる人材の育成を目指してまいります。

STiPSでは、政策形成における公共的関与の活動と分析をより効果的にするために、大阪大学と京都大学の連携により、幅広く科学技術の研究現場の動向を踏まえつつ、科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する研究を行います。またELSIに関する研究を基盤として、テクノロジーアセスメントなどの公共的関与の活動と分析を行うことにより、公共的関与に関する理論的かつ実践的な能力を備えた人材育成を進めてまいります。


STiPSでは、大学の知と社会の知をつなぐ「社学連携」の実践と、そこに学生が主体的に関与することも含めた教育を実施します。大阪大学・京都大学は、関西圏の経済界や地域行政との関わりも密接であり、科学技術を通じた連携・交流が極めて盛んです。これに加えて、一般市民やNGO/NPOなど市民社会の公共的関与活動への参画を促進することにより、地域社会のニーズや事情、課題をより的確に反映した科学技術イノベーション政策や研究開発の立案・企画に貢献してまいります。

本拠点の特色

大阪大学・京都大学は総合大学として、人文社会科学から自然科学・工学・医薬農学にわたる、日本有数の研究者集団を擁しています。それを背景として、研究の現場から不断にフィードバックを受け、教育に反映させることができる点が、本拠点の大きな特色となります。両大学が連携することにより、幅広く科学技術の研究現場の動向を踏まえつつ、ELSIに関する人文社会科学的な研究と教育を進め、臨場感と俯瞰的・長期的な視座を備えた政策のための科学の人材育成が可能となります。

また大阪大学・京都大学は、関西圏の経済界や地域行政との関わりも密接であり、科学技術を通じた連携・交流が極めて盛んです。これに加えて、一般市民やNGO/NPOなど市民社会の公共的関与活動への参画を促進することにより、地域社会のニーズや事情、課題をより的確に反映した科学技術政策や研究開発の立案・企画に貢献することができます。このことは、政策のための科学の人材育成にとっても意義があると考えられます。

公共的関与の研究と実践活動について、本拠点、特に大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(以下、CSCD)は、2005年の設立以来、日本における公共的関与に関する研究と実践の中核を担い、研究プロジェクトや社会実践を数多く行ってきました。また、それらの社会実践と連動する形で、文系・理系を問わず、大阪大学の全研究科の大学院生向けに科学技術コミュニケーション教育を実施し続けています。加えて、CSCD全体では、科学技術に限らず、医療福祉、地域コミュティ、芸術など多領域にわたって、大学の知と社会の知をつなぐ「社学連携」の実践と、そこに学生が主体的に関与することも含めた教育を実施しています。本拠点では、このような活動ならびに教育の基盤をもとに、公共的関与に関する理論的かつ実践的な能力を備えた人材育成を進めていきます。

他方、政策形成における公共的関与の活動と分析をより効果的で有意義なものにするためには、科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する研究と教育が不可欠です。ELSI研究は生命科学において誕生し、それ以降、情報通信技術、ロボット工学、ナノテクノロジー、エネルギーや原子力、環境、資源、防災・減災など、科学技術が関連する多様な分野・領域を対象としてきました。大阪大学・京都大学は、ELSI研究・教育の発祥地である生命科学・医学領域での豊かな研究・教育の蓄積を持っています。この蓄積を基盤として、幅広い領域を対象にしてELSIの研究・教育を進めることによって、テクノロジーアセスメントなどの公共的関与の活動と分析は、より多角的で深い洞察をもつものと考えています。

育成する人材像

二つの種類の「つなぐ人材」

本拠点では、「科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する研究を基盤として公共的関与の活動と分析を行い、学問諸分野間ならびに学問と政策・社会の間をつなぐことを通じて政策形成に寄与できる人材」を育成することを目的としています。具体的には、「つなぐ人材」として次の2つの類型を想定しています。


1.異分野・異領域の「間」に立って橋渡しをする「媒介者」としてのつなぐ人材

公共的関与の活動と分析そのものを専門とし、異分野・異領域(研究者集団・政策・産業・市民社会)の間のコミュニケーションを媒介し、俯瞰的な視点のもとに政策提言や政策形成を実行する人材。



2.個別分野の研究を行いつつ、その分野と他分野・他業種・市民等をつなぐ人材

自然科学・工学等や人文社会科学の個別分野の研究を行いつつ、他の専門分野や他業種、市民との間で双方向のフィードバックを通じて、政策提言や政策形成に貢献できる人材。



本拠点での習得を目指す知識・能力

・科学技術イノベーション政策に関する基本的理解。
・科学技術の歴史に関する基本的理解。
・科学論・科学哲学の諸議論に関する基本的理解。
・事例研究を通した、科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)等に関する
 科学技術社会論的な理解と洞察力。
・公共的関与に関する内外の事例とその理論的意義の理解と、企画・運営力に関わる実践知。
・公共的関与の活動を通じて、科学技術に関連する社会的課題・期待を可視化し、
 政策や研究開発の課題として考えるための基本的理解力と実践的能力。
・科学技術の最先端の研究開発現場での課題や期待についての基本的理解と政策提言能力。
・以上に求められる、他の専門分野や他業種・職種、市民等との
 コミュニケーションに必要な「つなぐ人材」としての俯瞰的視野とセンス。


育成される人材のキャリアパス

・主専攻の専門性を中心としつつ、さらに「政策のための科学」の素養を備えた人材として、大学、研究機関、企業などに就職することが想定されます。
・「政策のための科学」の素養と直接関係の深いキャリアパスとして、
 地方及び国の行政、政策秘書、シンクタンクが考えられます。
 また研究大学の研究戦略(research policy)担当者が考えられ、
 その需要は今後増大していく可能性があります。
・中央・地方行政や産業界などのリスクコミュニケーション人材なども想定されます。
 機関、企業などに就職することが想定されます。