大阪大学総長・西尾章治郞

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2012年度より、大阪大学は京都大学と連携して「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』」推進事業の一環として、「公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)」プログラムを実施して参りました。2011年3月の東日本大震災やそれに引き続いて起こった原子力発電所事故などを契機として、「科学技術文明」に改めて目を向け、その倫理性やイノベーションのあり方について考える必要性が高まったこと、また真に社会に貢献するイノベーションを実現するために大学が取り組むべきことは何かが問われるようになったことに対する、両大学からの応答がこのプログラムだと考えています。大学は科学技術の最先端を生み出す場でありますが、同時にこうした科学技術が社会にどのようなインパクトをもたらすのか、文理の壁を超え、さらに文明論的な視点も盛り込んで検討し得る場でもあります。

このプログラムが、そうした研鑽の機会を提供してきたことを誇りに思いますとともに、今後もその成果を学内のみならず、広く社会に還元していきたいと考えております。これまでも、大学は科学技術に関する研究や教育の実績を積んできましたが、本プログラムを通じて、「倫理」や「イノベーション」という視座を加えることにより、一層厚みの増した研究や人材育成につなげていくことができるものと確信いたしております。