研究活動
本拠点では、「科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する研究を基盤として公共的関与の活動と分析を行い、学問諸分野間ならびに学問と政策・社会の間をつなぐことを通じて政策形成に寄与できる人材」を育成することを目的としています。また、2016年度からは、個別政策課題解決を目指した、拠点間連携プロジェクト(個別政策課題プロジェクト)を実施しました。本拠点では、大阪大学メンバーを中心としたプロジェクトと京都大学メンバーを中心としたプロジェクト、それぞれを進めてきました。
2019年度から2020年度は、文部科学省の具体的な政策ニーズをもとに設定された研究課題に対して、研究者と行政官一緒になって研究を進める「共進化実現プロジェクト」に、本拠点から採択された2つのプロジェクトを実施してきました。
関連記事
□ SciREX「共進化実現プログラム(第Ⅲフェーズ)」に2件の研究プロジェクトが採択□ 『2018〜2021年度 宇宙に関するインターネット世論調査報告書』を掲載しました
□ SciREX「共進化実現プログラム(第Ⅱフェーズ)」に3件の研究プロジェクトが採択
□ ワークショップ開催報告『市民参加型ワークショップ「新しい医療と、くらし 〜再生医療のあるべき未来像〜」の記録』を発行しました
□ 記事一覧 >>>
1.公共的関与に関わる基盤的研究の実施
科学技術と社会のより良い関係を構築するためには、世の中の人々が、科学技術や公共政策に何を期待し、何を懸念しているか、どのような世界に生きたいと欲しているのか、といった社会の期待と懸念を把握することが大切です。多様なステークホルダーが参画・関与する公共的関与の活動と分析を行っています。また、定量的なエビデンスにおいては、実世界における各種のデータを可視化し、そこから様々な手法で解析評価をする手法の深化も重要です。実世界のデータからエビデンスへ、エビデンスから政策へ、そして政策を実施したのちにそれを評価していくというサイクルが形成されていくことになります。さまざまな学際領域の研究者同士が議論し、定量的研究、定性的研究と組み合わせて新しい学問を開拓していくことを目指したいと考えています。
2.拠点間連携プロジェクト(個別政策課題プロジェクト):阪大拠点
プロジェクト名
新しい科学技術の社会的課題検討のための政策立案支援システムの構築Developing a Support System for Addressing the Social Impacts of Emerging STI
プロジェクト実施機関
大阪大学(代表拠点)、政策研究大学院大学、東京大学、京都大学、九州大学プロジェクト期間
2016(H28)年4月~2019(H31)年3月プロジェクト概要
新しい科学技術の普及は、恩恵とともに様々な問題も社会にもたらします。研究開発の成果が円滑に社会に受容され、便益が最大化されるためには、対処すべき問題や実現されるべき価値・ニーズなどの社会的課題を研究開発の早い段階から漸次的に特定・検討し、政策立案や制度設計、研究プログラムの策定に効果的に反映することが望まれています。そこで本プロジェクトでは、新規科学技術の社会的課題が政策立案等で的確に検討・反映されるのを促進する「社会的課題検討のための政策立案支援システム(ツール)」を構築することを目指します。その他
本プロジェクトの紹介は『SciREX Quarterly』にも掲載されています。こちらからご覧ください。3.拠点間連携プロジェクト(個別政策課題プロジェクト):京大拠点
プロジェクト名
自治体の持つ学校健診情報の可視化とその利用に向けての基盤構築Visualizing the health information held by local governments for the policy development considering associated ethical and regulatory issues
プロジェクト実施機関
京都大学(代表拠点)、政策研究大学院大学、東京大学、大阪大学・プロジェクト期間 2016(H28)年4月~2019(H31)年3月
プロジェクト概要
ライフコースデータの構築に向けた学校健診情報のデータベース化とそれに伴う倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Implications:ELSI)へのアプローチにより市民・社会との相互理解を形成し、健康情報の利活用に向けた基盤を構築することを目的としています。学校健診情報の電子化及び収集・活用基盤の形成は、ライフコースデータの構築やデータを活用した持続可能な健康・医療政策に向けた第一歩となることが期待されます。小児期のBMIなどの健康状態は成人期の疾患リスクの予測につながることも報告されており、将来的な疾患の予防を通して健康水準の向上に寄与するだけでなく、成果は健康・医療政策の立案における重要な基礎資料としても活用可能であるという意義があると考えています。