つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)#4 静岡科学館る・く・る 代島慶一さん

2022年1月18日(火)、科学技術と社会のあいだで活躍する実践者から学ぶセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)」第4回を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。今シーズンは、Zoomウェビナーを活用し、オンライン形式で開催しています。今回は、大阪大学の学生を中心に20人(スタッフや授業の受講生も含む)が参加しました。




今回のゲストは、静岡科学館る・く・るの代島慶一さんです。前半は、代島さんから「地域における科学コミュニケーション活動とその拠点としての科学館」というタイトルの話題提供をしていただき、後半に質疑応答の時間をもちました。

まずは、代島さんの自己紹介から。高校生の頃から宇宙に関心を持ちつつ、一方で、生き物にも興味があったため、琉球大学理学部に進学し、大学では沖縄の鳥類生態・島嶼生態の研究をされていました。この研究を通じて、貴重な生き物を保護するためには、地元の人に関心を持ってもらうことが必要だと感じるようになったそうです。

人と自然をつなぐ、人と研究をつなぐ、ということに関わりたいと考えるようになった代島さんは、筑波大学の修士課程に進学し、自然保護地域の研究に取り組みました。大学院を卒業後、一旦はIT企業に就職したものの、やっぱり科学や自然を伝える仕事がしたいという気持ちがあったそうです。たまたま日本科学未来館のウェブサイトでスタッフ(2007年までは、科学コミュニケーターではなく、インタープリターと呼ばれていた)募集の案内を見つけ、転職を決めたとのことでした。日本科学未来館の科学コミュニケーターは5年の任期制なので、任期の後は、静岡科学館る・く・るでお仕事をされています。

静岡科学館る・く・るは2004年にオープンした「みる・きく・さわる」をキーワードにした体験展示型の科学館です。静岡科学館の特徴(職員数、来館者数や年齢層、イベント数など)を、日本科学未来館とも比較しつつ教えていただきました。日本科学未来館に比べ予算やスタッフ数は少ないですが、地域に根差した多くの活動をしているそうです。

代島さんは「企画・展示担当長」ということで、その活動内容について詳しく教えていただきました。静岡科学館の中で企画展の実施や、サイエンスショーの企画・実施、研究者とのトークイベントの企画、自然観察会の実施など、幅広い業務をこなしているそうです。

企画をする上で、工夫されていることについても教えていただきました。印象的だったのは代島さんの「子どもは面白くないと躊躇なく去ります」という言葉でした。静岡科学館の来館者は小学校低学年とその保護者が中心です。中高生や大人であれば、最後まで聞いてくれることが多いのですが、小学校低学年くらいの子の場合は、何か面白くないと感じた瞬間にすぐに立ち去ってしまうのだそうです。

子どもを対象にしたイベントを企画する上では、「最初のつかみ」をどうするか、参加感をどう醸成するかということをしっかり考えることが必要、というお話でした。来場者層の特徴をつかみ、それに合わせて企画を立てることが重要だということ、正確さと分かりやすさのバランスを取ることの大切さ、など、科学を伝えるための「鍵」を教えていただきました。

静岡科学館で取り組まれている「科学を伝える担い手の育成とその活動の場づくり」についてもお話がありました。静岡科学館では、毎年、科学コミュニケーター育成講座(全13回)を実施しています。これまでに講座を受講した人は約100人で、講座の卒業生は静岡県内で科学教室の実施や科学祭の立ち上げなど多様な活動をしているそうです。

さらに、静岡科学館では、地域で科学の普及活動をする人たちの活動紹介や交流の場として、「サイエンスピクニック」(ブース出展や実演会が多数行われるイベント)を企画実施しているそうです。「科学をつなぐ人たち同士の横のつながりをひろげていきたい」とお話されていました。

質疑応答の時間には、「静岡科学館が実施している科学コミュニケーター育成講座の受講者はどんなモチベーションがあるのか?」、「静岡科学館る・く・るだからこそできた、ということは?」などたくさんの質問が寄せられました。

代島さんのお話や質問への受け答えからは、科学を伝えることへの熱意が感じられました。多くの人が身近なところに科学を感じることのできるように、「科学を文化に」するために、地域の科学館が貢献できることを探して実践されている代島さんに大いに感銘を受けました。

文:床井 健運(大阪大学大学院理学研究科 博士後期課程2年)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員


【案内文】
セミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)」の第4回を2022年1月18日(火)に開催します。



今シーズンは、日本科学未来館にゆかりのある方々をお招きしています。
第4回のゲストは、静岡科学館る・く・るの代島慶一さんです。


■第92回STiPS Handai研究会
○題目:つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)#4
○ゲスト:代島 慶一 氏(静岡科学館る・く・る 企画・展示担当長/主査)
○日時:2022年1月18日(火)15:10〜16:40
○場所:オンライン会議システム
    *事前申込をされた方には、メールで参加方法をお伝えします。
○対象:主に、大阪大学の学生・教職員 
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎しますが、事前申込をお願いします。
○参加費:無料

○申込方法:以下のいずれかの方法で、事前のお申し込みをお願いします。
1)ウェブフォーム
申し込みフォーム(https://forms.office.com/r/GFnVsGHGEf)から、必要事項を記入の上送信をお願いします。

2)メール
以下の項目を明記の上、メールでstips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jpまでお送りください([at]は@にしてください)。
・氏名(ふりがな)
・所属
・参加を希望する回の日付

申し込みいただいた方には、オンライン会議システムへの参加方法をメールにてお送りします。

プログラム
1)はじめに(10分程度)
2)ゲストによる話題提供「地域における科学コミュニケーション活動とその拠点としての科学館」(30分程度)
3)質疑応答&ディスカッション(50分程度)

ゲストプロフィール
代島 慶一 氏(静岡科学館る・く・る 企画・展示担当長/主査)
高校・大学時代に宇宙や生態系保全に関心を持ち、琉球大学理学部で生態学を学んだ後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。一旦、民間企業に就職したが、日本科学未来館の科学コミュニケーター募集を見て「もう一度、星や自然の魅力を伝えながら、人々の行動に影響を及ぼす方法を実地で学びたい」と転職。展示解説や実演、友の会事業、ドームシアターなどの業務に5年間従事後、2011年より静岡科学館に移る。静岡では企画展や科学教室、サイエンスカフェなど科学イベントや、地域における科学コミュニケーション活動の拠点づくりを推進すべく科学コミュニケーター育成講座や科学祭など連携事業を展開中。


○その他:
・大阪大学COデザインセンターが開講する2021年度冬学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催します。
・この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。

○申込先・問い合わせ先:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
 stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学COデザインセンター、大阪大学 社会技術共創研究センター

本シリーズについて
科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたい…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするセミナーシリーズです。

マスメディアや研究機関、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事を創り出すということ
などについてお話を伺いながら、参加者も交えて議論します。


「つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)」は以下のようなスケジュールで実施します。

#1 12月14日(火)日本科学未来館 森田由子さん
http://stips.jp/20211214/
#2 12月21日(火)JST 研究開発戦略センター(CRDS) 嶋田義皓さん
http://stips.jp/20211221/
#3 1月11日(火)一般社団法人SiCP/中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部 桑子朋子さん
http://stips.jp/20220111/
#4 1月18日(火)静岡科学館る・く・る 代島慶一さん
http://stips.jp/20220118/
#5 1月25日(火)サイエンスライター/科学コミュニケーター 堀川晃菜さん
http://stips.jp/20220125/


フライヤー(PDF:516KB)