つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)#3 一般社団法人SiCP/中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部 桑子朋子さん

科学技術と社会のあいだで活躍する実践者から学ぶセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)」第3回を、2022年1月19日(水)に実施しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。Zoomウェビナーを活用し、オンライン形式で開催したこの回には、大阪大学の学生を中心に15人(スタッフや授業の受講生も含む)が参加しました。




第3回のゲストは、桑子朋子さん。このシリーズの他の回同様に、今回も、前半はゲストによる話題提供です。話題提供のタイトルは「企業での”つなぐ”仕事とScience Communication & Production」でした。
桑子さんは、中外製薬株式会社デジタル戦略推進部でお仕事をしつつ、一般社団法人SiCPの理事も務めていらっしゃいます。これまで、JT生命誌研究館、日本科学未来館、国立がん研究センター、電通テックと様々な機関でお仕事をされた経験があるそうです。初めからこのようなキャリアを計画していたわけではなく、その時々のライフイベントや、自分の関心にしたがってキャリアチェンジしてきた、とのことでした。それぞれの機関でどのようなことに取り組み、何を感じたのかということを順にご紹介いただきました。

・サイエンスコミュニケーションの仕事
桑子さんのサイエンスコミュニケーションとの関わりは、JT生命誌研究館からスタートしました。「サイエンティスト・ライブラリー」を作るお仕事に関わったり、DNAをわかりやすく伝える展示「あなたの中のDNA」などを制作されたりしたそうです。

その後、ボストンで専業主婦として過ごした期間の後、日本科学未来館(以下、未来館)に、科学コミュニケーターとして就職されました。未来館では、展示フロアに立って来館者に直接語りかけるという仕事も経験したけれど、それよりも、展示やデモンストレーションを企画するようなプロデュースや編集といった仕事の方が得意だった、とお話される桑子さんでした。また、公式SNSや「科学コミュニケーターブログ」の立ち上げをしたりもされたそうです。

桑子さんが考える「サイエンスミュージアムの面白さ」も紹介していただきました。サイエンスミュージアムの面白さは、人々が集う場であること、基本的にはは非営利であること、非日常の科学・文化と日常の生活・社会とをつなぐ役割を堂々と担うことができること、また、ミュージアムに関わる人々のものの見方や世界観を変えうること、にある、と。こういったサイエンスミュージアムの存在意義は、それぞれの館のコンセプト(の言葉)にも表れているということを強調されていました。

桑子さんは、こういったサイエンスコミュニケーションの仕事を通して、当時様々な課題(例えば、「科学コミュニケーションの職業としての持続性は・・・?」「科学・研究者に対して何らかの還元ができている?」「費用対効果が見込めるものなのか?」など)も感じていたそうです。

・広告代理店での仕事
その後、桑子さんは民間企業にキャリアチェンジ。電通テックでプランナー・コンサルタントとして勤務されました。当時の広告代理店は、デジタル変革を迫られた激変の時代だった、とのこと。その中で、プランナー・コンサルタントという立場で、クライアントの「いま」と「あるべき姿」を分析・言語化して戦略を立て、情報発信の方向性を打ち出す、といったお仕事をされていたそうです。

・製薬企業での仕事
現在は、中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部で、社内のすべての部署を横断し、DXを推進するというお仕事をされています。具体事例として、中外製薬のヘルスケアに関するビジョンを表現するために作成された動画「ヘルスケアの未来 2030|CHUGAI DIGITALビジョンムービー」を、お話の途中に見せていただきました。医療の専門的な知識を持ち合わせていない私でも、十分理解・納得することのできる非常に分かりやすい動画でした。

・自然科学の面白さを伝える活動
現在は、民間企業でのお仕事の傍ら、自然科学そのものの面白さを伝える活動も継続されています。JT生命誌研究館で一緒に働いていたメンバーと共に一般社団法人SiCPを立ち上げ、徐々に活動の幅を広げる準備をされているとのことでした。


お話の各所に、桑子さんが考える「つなぐ人とは?」が登場していました。「これから求められるつなぐ人というのは、ただ情報を横流しにする人ではなく、課題解決や価値創造に貢献する人である」、「今後、つなぐ人は、どんなコミュニティ、組織にも求められる」、「つなぐ人の特徴として、自助、互助、共助のバランスがとれているということが挙げられるのではないか」。様々な場所で、様々なお仕事を経験されてきた桑子さんがおっしゃるこの言葉は、とても説得力があるように感じます。つなぐ人のマインドセットや哲学のようなものを考えるきっかけになりました。

文:笠場 愛尋(大阪大学法学部国際公共政策学科 2年)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員


【案内文】
セミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)」の第3回を2022年1月11日(火)に開催します。

*諸事情により開催が延期されていました。2022年1月19日(水)に開催することになりました。(2022年1月18日追記)




今シーズンは、日本科学未来館にゆかりのある方々をお招きしています。
第3回のゲストは、桑子朋子さんです。JT生命誌研究館や日本科学未来館を経て、中外製薬株式会社でお仕事をされており、その傍ら、一般社団法人SiCPの理事も務めていらっしゃいます。


■第91回STiPS Handai研究会
○題目:つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)#3
○ゲスト:桑子 朋子 氏(一般社団法人SiCP 理事/中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部)
○日時:2022年1月11日(火)15:10〜16:40
 *諸事情により開催が延期されていました。
 *2022年1月19日(水)15:00〜16:30に開催することになりました。
(2022年1月18日追記)

○場所:オンライン会議システム
    *事前申込をされた方には、メールで参加方法をお伝えします。
○対象:主に、大阪大学の学生・教職員 
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎しますが、事前申込をお願いします。
○参加費:無料

○申込方法:以下のいずれかの方法で、事前のお申し込みをお願いします。
1)ウェブフォーム
申し込みフォーム(https://forms.office.com/r/GFnVsGHGEf)から、必要事項を記入の上送信をお願いします。

2)メール
以下の項目を明記の上、メールでstips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jpまでお送りください([at]は@にしてください)。
・氏名(ふりがな)
・所属
・参加を希望する回の日付

申し込みいただいた方には、オンライン会議システムへの参加方法をメールにてお送りします。

プログラム
1)はじめに(10分程度)
2)ゲストによる話題提供「企業での“つなぐ”仕事とScience Communication & Production」(30分程度)
3)質疑応答&ディスカッション(50分程度)

ゲストプロフィール
桑子 朋子 氏(一般社団法人SiCP 理事/中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部)
静岡大学理学部生物地球環境科学科卒業、大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻修士課程中途退学。JT生命誌研究館、日本科学未来館 科学コミュニケーター、国立がん研究センター研究所 特任研究員を経て民間企業にキャリアチェンジし、電通テックでプランナーとしてクライアント企業のブランディング、マーケティングを支援。2020年より現職。製薬会社でDX(デジタルトランスフォーメーション)におけるコミュニケーション施策を企画・推進する傍ら、2021年に一般社団法人SiCP(https://life-sicp.jp/)を設立しScience Communication & Productionを再始動。

○その他:
・大阪大学COデザインセンターが開講する2021年度冬学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催します。
・この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。

○申込先・問い合わせ先:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
 stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学COデザインセンター、大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)

本シリーズについて
科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたい…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするセミナーシリーズです。

マスメディアや研究機関、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事を創り出すということ
などについてお話を伺いながら、参加者も交えて議論します。


「つなぐ人たちの働き方(2021年度冬)」は以下のようなスケジュールで実施します。

#1 12月14日(火)日本科学未来館 森田由子さん
http://stips.jp/20211214/
#2 12月21日(火)JST 研究開発戦略センター(CRDS) 嶋田義皓さん
http://stips.jp/20211221/
#3 1月11日(火)一般社団法人SiCP/中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部 桑子朋子さん
http://stips.jp/20220111/
#4 1月18日(火)静岡科学館る・く・る 代島慶一さん
http://stips.jp/20220118/
#5 1月25日(火)サイエンスライター/科学コミュニケーター 堀川晃菜さん
http://stips.jp/20220125/


フライヤー(PDF:516KB)