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つなぐ人たちの働き方シリーズ #3 NPO法人市民科学研究室・上田昌文さん 「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)(42)開催



2018年12月18日(火)に、NPO法人市民科学研究室(以下、市民研)の上田昌文さんをお迎えして、科学技術と社会のあいだで活躍する実践者から学ぶセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方」第3回を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。授業を履修している学生や大阪大学教職員に加えて、学外からの参加者など計18人が集まりました。

上田さんによる話題提供「科学技術と社会をつなぐ仕事を創る」の中では、以下のようなことをご紹介いただきました。
・上田さんが代表理事をされている市民研が目指していること
・市民研を立ち上げるまでの経緯
・上田さんが考える「市民科学」について
・市民研を運営するにあたり大切にされていること
など。

「市民科学」という言葉を最近よく耳にします。ある分野に興味を持つ一般の人が、科学者とデータや論文を共有し、研究活動に参加する、つまり科学研究課題を市民と研究者が協力して解決し、科学を発展させようという活動を指すことが多いかもしれません。これに対して、市民研が取り組んでいるのは「社会問題解決型」の市民科学です。市民が抱える課題のために市民が創る科学。身近な科学技術に関する問題を市民が市民のためにわかりやすく紹介したり、生活の場面で違和感を持った市民と研究者・行政・企業を繋いだり、何度も勉強会を重ねたり、といった活動をされています。このような活動を職業として成り立たせている人は日本では数えるほどしかいないのではないでしょうか。

市民研の実践内容と実践を継続する上で大切にされていることとして、以下のようなお話がありました。

1)仕事を超えて、志を同じくする人があつまる「志縁」を大事にしたい。
市民研は会員からの支援で成り立っている組織です。この志を市民科学の実践にどうつなげていくか、ということを日々考えて活動をされています。また、市民研の活動を継続するためには「いい人」に関わってもらうことが重要です。一緒に活動したいと思える環境を整えつつ、「いい人」を見つけたら一緒にやろう!と言えるだけの機動力、調査力が必要なのだそうです。

2)市民研の調査の結果を社会変革(の可能性)につなげたい。
市民研が心がけているのは、分かりやすい説明と正確な情報、そして中立な意見です。そのために学会に足を運んだり、科学者への質問やインタビューを繰り返し行なったりと、地道な努力を続けているそうです。数年かけて研究するテーマもあります。市民研を維持していくためには、議員や行政、企業などとの関係性も大切にしています。無理な要求がくることもありますが、そのような場面もうまくやりくりして、市民と市民研、行政や企業と市民研の良い繋がりを維持することで市民のためのコンテンツを発信し続けることができているのだそうです。

3)生活をよりよくするための科学を学ぶ場を提供したい。
科学への好奇心を喚起させるために、市民研では子ども料理科学教室や小学校での出前授業を行なっています。例えば子ども料理科学教室では、炊飯器を使わずにお米を炊いたり、初めに完成した料理を食べて、どんな食材がどんな調理法で使われているのか子どもたちに考えてもらったりするコンテンツがあります。子どもたちに、自ら考え、そして、試すことができるようになってもらいたいという思いで実施されているそうです。

上田さんがどのようにして市民研を発展させ、自分の仕事を「食べていける」までにしたのか、というお話は、参加者にとって刺激的だったようです。参加者からは「自分の意思を一から実現したのはすごいと感じた」、「自分の軸や信念をしっかり持っていらっしゃるから、質問の答えにもとても説得力があった」「『世の中にない仕事をつくる』ということを成し遂げつつある人という印象が強い」というコメントが寄せられました。上田さんは、「幾つもの偶然が重なって、今の仕事に結びついた」とおっしゃっていました。しかし、この巡り合わせはおそらく偶然ではなく必然ではないか、上田さんが目指すことを成し遂げるために着実に準備をしていたからこそ、今本当にやりたいことを仕事にできているのではないか、と感じられるお話でした。

文:林 美穂(生命機能研究科 博士前期課程)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員




【案内文】
2018年12月18日(火)に、大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデント・コモンズにおいて、「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)を開催します。今回のゲストは、NPO法人市民科学研究室・上田昌文さんです。



■第42回STiPS Handai研究会
○題目:つなぐ人たちの働き方シリーズ #3
○ゲスト:上田 昌文 氏(NPO法人市民科学研究室 代表理事)
○日時:2018年12月18日(火)16:20~17:50(開場 16:10)
○場所:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構
 ステューデントコモンズ2階 セミナー室A

○対象:どなたでも
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、学内、学外を問わず、履修登録者以外の方の参加も歓迎です。
○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:
ウェブフォームへの入力をお願いします。
または、
件名を「第42回STiPS Handai研究会・参加申込」として、以下の項目を明記の上、メールでお送りください。
・氏名(ふりがな)
・所属
○申込先・問い合わせ先:stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点
○共催:大阪大学COデザインセンター


概要
何か科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではないかもしれない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたいのだけれど…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするイベントシリーズ「つなぐ人たちの働き方」を開催します。

研究機関の広報室やNPO法人、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事をつくっていくということ
などについてお話を伺いながら、参加者全員で議論したいと考えています。

大阪大学COデザインセンターが開講する2018年度冬学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催しますが、この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。

第3回(12/18)のゲストは、NPO法人市民科学研究室の上田昌文さんです。
「生活者にとってより良い科学技術とは」を考え、そのアイデアの実現を目指すNPO法人市民科学研究室(市民研)の代表理事をされています。
今回は、科学技術と社会をつなぐ仕事を自ら開拓されてきた上田さんのお話を伺います。


プログラム
1)はじめに
2)ゲストによる話題提供「科学技術と社会をつなぐ仕事を創る〜NPO法人市民科学研究室の活動を例に〜」
3)質疑応答&ディスカッション

ゲストプロフィール
大学では生物学を専攻。
1992年に市民科学研究室の前身である「科学と社会を考える土曜講座」という名の市民による研究・学習グループを発足させ、科学技術関連の社会問題への取り組みを開始。
各地での講演や大学でのゲスト講義や雑誌連載の執筆など多数。
クラシック音楽と古本屋めぐりと子どもと遊ぶことが大好き。


本シリーズについて
2018年度冬「つなぐ人たちの働き方シリーズ」は以下のようなスケジュールで実施します。

#1 12月4日(火) 京都大学総合博物館・塩瀬隆之さん
#2 12月11日(火) 徳島大学 副学長・斉藤卓也さん
#3 12月18日(火) NPO法人市民科学研究室 代表理事・上田昌文さん
#4 1月8日(火) 京都大学iPS細胞研究所 国際広報室・和田濵裕之さん
#5 1月15日(火) 朝日新聞大阪本社 科学医療部 記者・合田禄さん


FlyerA4_STiPSHandai_2018win_181116(PDF: 406KB)