つなぐ人たちの働き方シリーズ #5 朝日新聞 科学医療部 記者・合田禄さん 「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)(44)開催



2019年1月15日(火)、朝日新聞科学医療部 記者の合田禄さんをお招きして、科学技術と社会のあいだで活躍する実践者から学ぶセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方」第5回を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。この日の会場(大阪大学豊中キャンパス全学教育推進機構ステューデントコモンズ2階セミナーA室)には、「科学技術コミュニケーション入門B」の授業履修生以外にも、メディアに興味のある大学院生や学外からお越しの方々計22人が参加しました。

合田さんには、まず、「サイエンスを伝えるメディアは、いま何を考えているのか」というタイトルで50分程の話題提供をしていただきました。合田さんは、京都大学大学院農学研究科の修士課程を修了された後、朝日新聞社に就職され、現在は科学医療部の記者として、再生医療や医療事故、研究不正などの記事を担当されています。例えば、無痛分娩に関わる事故に関して、遺族側と医者側の相反する両者の考えを取材し、記事にされています(「『無痛分娩、長女に障害』和解 両親、京田辺市の医院側と」2019年1月8日掲載)。また、2018年12月には、ノーベル医学生理学賞のメイン担当記者として、ノーベル賞授賞式の取材のためにストックホルムに足を運ばれたそうです(例えば、「祝う、世界と弟子と 救った命、本庶さん『報われた』ノーベル賞」2018年12月11日掲載)。「科学医療」という多岐にわたる内容を取材されている経験から、多様化するメディアについての現状やサイエンスを伝えるという仕事について、詳しくお話して頂きました。

近年、紙メディアである新聞の需要が減少する一方で、ウェブメディアが多様化しています。朝日新聞社は紙メディアの印象が強かったのですが、紙面だけではなく多くのウェブメディアにも力を入れているそうです。ウェブサイトの1つである「朝日新聞デジタル」では、文章だけではなく動画を用いた記事も増えてきています。また、朝日新聞の記者は、若者向けの記事を扱う「withnews」というメディアにも記事を書いています。特定の分野やターゲットに特化したバーティカルメディアの需要も増加しているそうです。例えば、ミレニアル世代の女性向けの記事を載せた「telling,」、認知症の方とその家族に向けた「なかまぁる」などがあり、それぞれの読者層のニーズに合わせた記事が集められています。同じニュースでも、どのメディアに掲載するかによって記事の文章を変えることもあるということでした。多くのメディアがある中、朝日新聞社としてどのような記事を掲載すべきか、日々考え続けているそうです。

また、デジタル上での読者の興味を分析する「Hotaru」という最新技術を用いたシステムが朝日新聞には導入されているそうです。このシステムにより、どのような記事が読まれているかを、リアルタイムで記者や編集者が把握することができ、紙面に載せる記事にも反映させることができるそうです。新しい技術を活用しつつ、「自分が書きたいこと」だけではなく、「読者が読みたいと思うこと」と「伝えなければならないこと」を考えながら日々取材をしているというお話が印象的でした。

合田さんには、企業や大学など様々な団体から1日に30通程度のプレスリリースが届きます。科学医療部として約5年間働いてきた今では、タイトルを見るだけで読者が興味をもちそうな内容かどうか、記事にする価値があるかどうかなどをある程度判断しているそうですが、この能力はもともと持っていたものではなく働きながら身につけてきたということで、社会人になってからも熱心に学び続ける姿勢の大切さを感じているそうです。また、記者として重要なプレスリリースを見落とさずに正しく伝えていくことの重要性を、最後にお話しして頂きました。

合田さんの話題提供に続いて、質疑応答とディスカッションが行われました。記事にする基準や、記事にする際の課題について、また記者として必要な能力や責任感について、会場からは多くの質問があり、活発な議論が行われました。

文:福田 奈那美(理学研究科 博士前期課程)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員




【案内文】
2019年1月15日(火)に、大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデント・コモンズにおいて、「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)を開催します。今回のゲストは、朝日新聞 科学医療部の合田禄さんです。



■第44回STiPS Handai研究会
○題目:つなぐ人たちの働き方シリーズ #5
○ゲスト:合田 禄 氏(朝日新聞大阪本社 科学医療部 記者)
○日時:2019年1月15日(火)16:20~17:50(開場 16:10)
○場所:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構
 ステューデントコモンズ2階 セミナー室A

○対象:どなたでも
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、学内、学外を問わず、履修登録者以外の方の参加も歓迎です。
○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:
ウェブフォームへの入力をお願いします。
または、
件名を「第44回STiPS Handai研究会・参加申込」として、以下の項目を明記の上、メールでお送りください。
・氏名(ふりがな)
・所属
○申込先・問い合わせ先:stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点
○共催:大阪大学COデザインセンター


概要
何か科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではないかもしれない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたいのだけれど…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするイベントシリーズ「つなぐ人たちの働き方」を開催します。

研究機関の広報室やNPO法人、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事をつくっていくということ
などについてお話を伺いながら、参加者全員で議論したいと考えています。

大阪大学COデザインセンターが開講する2018年度冬学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催しますが、この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。

第5回(1/15)のゲストは、朝日新聞大阪本社 科学医療部の合田禄さんです。
合田さんは、基礎研究から、応用や臨床研究まで、健康や医療に関わる話題について幅広い記事を執筆されています。この数ヶ月は、2018年のノーベル医学生理学賞関連の取材も。
今回は、健康や医療に関わる話題をマスメディアで扱う際に日々気をつけていること、悩んでいることなどを、参加者のみなさんと議論したいと思います。

プログラム
1)はじめに
2)ゲストによる話題提供「新聞社というメディアで健康医療情報を伝える」
3)質疑応答&ディスカッション

ゲストプロフィール
京都大学大学院農学研究科(専攻は森林科学)を修了。
朝日新聞では、5年間の地方勤務の後、東京本社と大阪本社の科学医療部で、再生医療、医療事故、研究不正などを担当。基礎研究の論文発表の記事などを随時執筆している。
今年のノーベル医学生理学賞はメイン担当で、12月はストックホルムへ取材に。



本シリーズについて
2018年度冬「つなぐ人たちの働き方シリーズ」は以下のようなスケジュールで実施します。

#1 12月4日(火) 京都大学総合博物館・塩瀬隆之さん
#2 12月11日(火) 徳島大学 副学長・斉藤卓也さん
#3 12月18日(火) NPO法人市民科学研究室 代表理事・上田昌文さん
#4 1月8日(火) 京都大学iPS細胞研究所 国際広報室・和田濵裕之さん
#5 1月15日(火) 朝日新聞大阪本社 科学医療部 記者・合田禄さん


FlyerA4_STiPSHandai_2018win_181116(PDF: 406KB)