つなぐ人たちの働き方シリーズ #4 京都大学iPS細胞研究所・和田濵裕之さん 「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)(43)開催


2019年1月8日(火)に、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の和田濵裕之さんをお迎えして、つなぐ人たちの働き方シリーズ第4回を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。授業を履修している学生や大阪大学教職員に加えて、学外からの参加者など計19人が集まりました。

5回に渡って行われている「つなぐ人たちの働き方シリーズ」は、科学技術をはじめ様々な分野の専門知識を一般の人にどのように伝えることができるか、よりよく伝えるためにどのような方法を取っているかなどを、日々実践を行っている現場の方々から直接お話を聞くことのできる機会です。第4回は、研究機関で広報という役割を担っている方のお話でした。

和田濵裕之さんはCiRAの国際広報室でサイエンスコミュニケーターとしてお仕事をされています。大学院生の頃は、ダイズタンパク質について研究をされていたこともあり、遺伝子組換えダイズに関わる専門家と市民の認識のギャップに問題意識を持っていたそうです。博士号取得後は、当時大阪大学で実施されていたインターンシッププログラムを活用して、理化学研究所内の国際広報室で科学コミュニケーションに関する実務経験を積み、2012年から今の職場でお仕事をされています。

CiRA国際広報室の基本方針は「市民に誠実な広報をする」こと。正確で適切、そして透明性のある情報発信を心がけているそうです。また、CiRAには大きな予算が投じられていることもあり、その説明責任を果たすこと、そして、iPS細胞研究・技術への理解を深めてもらうための役割を果たすこともミッションの一部です。

国際広報室の業務は大きく2つに分けることができます。1つは「一般市民向け」、もう1つは「メディア向け」です。

一般市民向けの業務の具体例としては、まず、誰でも参加することのできるシンポジウムの開催が挙げられます。他にも、患者さん向けの小規模イベントや子ども向けのワークショップの実施なども行っています。シンポジウムが、一方的な情報発信の場になりがちであるのに対して、患者さん向けのイベントは、iPS細胞研究の現状を伝えながら患者さんの意見も聞くことのできる双方向的なコミュニケーションの場です。子ども向けのワークショップでは、かるたやすごろくなどのゲームを使いながら、難しい内容をできるだけやわらかく伝えることを目指しています。特に、「幹細胞かるた」に関しては、子どもだけでなく、日本語が分からない海外の方でも楽しんでもらえるツールになっているそうです。

マスメディアを活用することによって、より多くの人に情報を届けることができます。そのため、メディア向けの仕事も大切です。具体的な業務としては、取材対応や書籍の原稿の確認、テレビ番組への出演依頼の調整などがあります。どの番組に出演するのか、どんな内容にするのか、などは、慎重に判断をしているそうです。

このように、国際広報室に所属している和田濵さんは、研究者と記者、または、研究者と一般市民との間の橋渡し役をしていらっしゃいます。ただ、広報をする上でのジレンマも存在するそうです。研究者側としては、より多くの人に研究の成果を知ってほしいという気持ちで広報を行うものの、その研究成果に関する報道が患者さんに過度な期待を抱かせてしまうようなことになってしまうのは本意ではありません。情報を単に広めるのではなく、できるだけ情報を受け取る側に誤解されないように注意を払って情報発信を行っているそうです。

当日参加をしていた人たちからは次のような感想が寄せられました。「徹底的に信頼を崩さないための戦略が聞けておもしろかった。」「身近なようで実はあまり細かく知らない広報の仕事がよく分かった。特に知名度の非常に高い研究所ならではの悩みもお話頂けたことで、多面的な考えを知ることができた。」


文:KIM DAEUN(経済学部 4年)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員




【案内文】
2019年1月8日(火)に、大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデント・コモンズにおいて、「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)を開催します。今回のゲストは、京都大学iPS細胞研究所 国際広報室・和田濵裕之さんです。


■第43回STiPS Handai研究会 ○題目:つなぐ人たちの働き方シリーズ #4
○ゲスト:和田濵 裕之 氏(京都大学iPS細胞研究所(CiRA) 国際広報室 特定研究員)
○日時:2019年1月8日(火)16:20~17:50(開場 16:10)
○場所:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構
 ステューデントコモンズ2階 セミナー室A

○対象:どなたでも
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、学内、学外を問わず、履修登録者以外の方の参加も歓迎です。
○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:
ウェブフォームへの入力をお願いします。
または、
件名を「第43回STiPS Handai研究会・参加申込」として、以下の項目を明記の上、メールでお送りください。
・氏名(ふりがな)
・所属
○申込先・問い合わせ先:stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)
○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点
○共催:大阪大学COデザインセンター


概要 何か科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではないかもしれない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたいのだけれど…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするイベントシリーズ「つなぐ人たちの働き方」を開催します。

研究機関の広報室やNPO法人、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事をつくっていくということ
などについてお話を伺いながら、参加者全員で議論したいと考えています。

大阪大学COデザインセンターが開講する2018年度冬学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催しますが、この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。

第4回(1/8)のゲストは、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)国際広報室の和田濵裕之さんです。
サイエンスコミュニケーターとして働く和田濵さんは、プレスリリースや刊行物の作成、メディア対応、一般向けイベントや国際シンポジウムの企画、そしてSNSを使った発信に至るまでさまざまな業務に関わっています。
今回は、iPS細胞研究と社会をつなぐ仕事の意義や課題について、いろいろなお話を伺いたいと思います。


プログラム 1)はじめに
2)ゲストによる話題提供「iPS細胞研究を伝える仕事」
3)質疑応答&ディスカッション
ゲストプロフィール 京都大学大学院農学研究科にてダイズタンパク質に関して研究し、博士号を取得。
研究を進める過程で、遺伝子組換ダイズに対する一般の方々と研究者との間に大きな認識の乖離があることを痛感し、科学コミュニケーションの分野へ。
理化学研究所 発生再生科学総合研究センター(当時)にて科学コミュニケーションに関する実務経験を積んだ後、2012年より現職。
現在はiPS細胞技術を中心に、一般の方々と研究者との間を繋ぐ活動を行っている。



本シリーズについて 2018年度冬「つなぐ人たちの働き方シリーズ」は以下のようなスケジュールで実施します。

#1 12月4日(火) 京都大学総合博物館・塩瀬隆之さん
#2 12月11日(火) 徳島大学 副学長・斉藤卓也さん
#3 12月18日(火) NPO法人市民科学研究室 代表理事・上田昌文さん
#4 1月8日(火) 京都大学iPS細胞研究所 国際広報室・和田濵裕之さん
#5 1月15日(火) 朝日新聞大阪本社 科学医療部 記者・合田禄さん

FlyerA4_STiPSHandai_2018win_181116(PDF: 406KB)