市民参加型ワークショップ「感染症対策に使われる情報技術と、わたしたちのくらし」@オンライン

2020年8月22日(土)に、市民参加型ワークショップ「感染症対策に使われる情報技術と、わたしたちのくらし」をオンラインで開催しました。

STiPSがオンラインでワークショップ開催するのは初めてです。昨年度までに実施してきた市民参加型ワークショップの進め方をベースにして、対面でのワークショップの良さをできるだけ残しつつ、また、オンライン開催のメリットも生かせるように心がけながら企画しました。これまで同様、グループごとの対話の時間と、全体での共有の時間を組み合わせた進行でした。



この日の一般参加者は17人。20代から80代まで、幅広い年代の方にご参加いただきました。また、今回はオンライン開催ということもあって、東は東京から西は岡山まで、さまざまな地域から参加していただくことができました。また、一般参加者に加えて、グループファシリテータが8人参加していました。このグループファシリテータは、主にSTiPSの履修学生や修了生がつとめ、グループごとの対話の時間をサポートしました。1グループあたり、3〜5人の一般参加者とグループファシリテータ2人で対話を進めました。

一般参加者のみなさんとグループファシリテータ、そして、ゲストのお二人は、それぞれ自宅やオフィスなどからZoomにつないでいたのですが、全体進行をつとめる八木絵香(大阪大学COデザインセンター 教授)と運営スタッフは、リアル会場(豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデント・コモンズ セミナー室D)に集っていました。八木教授が説明している様子やホワイトボードに意見をまとめていく様子、説明資料など、映像を随時切り替えながら配信を行いました。当日、参加者のみなさんには見えていなかったリアル会場の裏側の様子(の一部)はこちら。



予告していた開始時間の少し前から、既に“入室”されている参加者のみなさんへの呼びかけ(参加者のみなさんはチャットでの応答)を始めました。オンラインイベントの場合、一緒にどのような方が参加をされているのだろう?ということがよくわからない中でプログラムが進んでいくことが多くなってしまうのですが、今回は、まずは、参加者やスタッフの紹介から始めてみました。お一人ずつ、ワークショップのお供として準備されている飲み物などを紹介してもらいながらの自己紹介でした。

この後、この日のワークショップの主題を説明したのち、グループでの対話が始まりました。



前半のグループ対話のお題は、「あなたは、接触確認アプリ(COCOA)を入れている? 入れていない? それはなぜ?」というものです。実際に使っていた人もいましたし、ワークショップ中にダウンロードしてみている人や、やっぱり使いたくないと考える人など、さまざまな関わり方がありました。それぞれの立場から、考えや意見などを出し合っていきました。



この時間に出てきた意見や疑問には以下のようなものがありました。
「アプリがあまり広がらないのはなぜなのか。何だか中途半端な感じがする」
「何のために入れるのか、よく分からない。入れたら何ができるのか」
「強制的にやらないと意味がないのでは?」
「入れた人には何か特典があるようにするなど、動機付けが必要では?」

多様な観点が出てきたところで、一度、グループファシリテータがここまでの議論の内容をまとめて発表し、参加者全員で共有しました。リアル会場からは、出てきた意見をホワイトボードに集約していく様子を配信していました。ここで共有された意見や疑問などをもとに、ゲストのお二人からコメントをいただきました。

例えば、詫摩雅子さん(日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任)からは、「個人にとってこのアプリを入れることにどういう意味があるのか、その人の周りの人にとって、また社会全体にとって良いことがあるのだろうか──この点がよくわからないという人が多いという意味では、確かに広報が足りていないのだろう」、「接触の機会があったという通知が届いた後、ではその人はどうすればいいのか、その人の相談先も含めて全体の設計がうまく行っていないのではないか」といったコメントがありました。



休憩をはさんで、後半のグループ対話では、前半の議論を踏まえて、「COCOAのような感染症対策のための情報技術が社会の中で浸透していく際に、大切にしなければならないこと(考えなければならないこと)は何でしょう?」ということを考えてみました。

あるグループではこんなやりとりがありました。
「メリット、デメリットを明らかにして、それをきちんと知らせて欲しい」
「日本では社会全体で何を求めるのか、グランドデザインが見えていないままだから中途半端に感じてしまうのかもしれない」

後半のグループ対話の時間もあっという間に過ぎ、再び、ブレイクアウトルームからメインセッションに戻る時間です。今回も、各グループで出てきた意見を全体で共有しながら、ゲストのお二人からコメントをいただきました。



岸本充生さん(大阪大学データビリティフロンティア機構 教授/社会技術共創研究センター センター長)からは、「COCOAを導入するにあたり、今日のワークショップで出てきたような多様な議論をすくい上げる機会がなかったのではないか。パブリックコメントなども行われなかったし、消費者団体などが提言を出すというプロセスもなかったことは残念」といったコメントや、「現状では、公衆衛生に関わる全体の戦略の中で、COCOAがどのように位置付けられているのかが見えてこない。技術単体を指して、いくら安全です。セキュリティも大丈夫です。と言ったところで、その技術が社会の中でどのように位置づけられるのかがわからなければ、中途半端に見えてしまう」という発言がありました。

進行役からの「「技術から取り残されてしまう人ができるだけでないように、じっくり丁寧に進める」ということと、「対策を今すぐに進める」ということを両立させることは難しい。何かことが起こってしまった後に考えるのではなくて、今顕在化した課題を次の機会に活かすことができるようにすることが大切なのかもしれない」というまとめのお話でワークショップは終了しました。

このまま接続を切ってしまうのも寂しいので、最後にもう少しだけそれぞれのグループに戻ってもらって、お互いの感想をシェアしつつ退出していただくことにしました。

参加者からは「10分20分でもいいから他の人がどう思っているのかということをワイワイ話せて、知ることができたのは良かった」「スマホしか触ったことがなかったし、その基準でばかり考えていたが、I T以外の方法でも解決策を考えることができるかもしれない、という視点が新鮮だった」といった感想が寄せられました。

今回のワークショップでは、グループファシリテータとして、東京など遠隔地にいる修了生にも手伝ってもらったということも、STiPSとしては大きな収穫でした。ワークショップ終了後には、スタッフとグループファシリテータで振り返りの時間を設けたのですが、普段はなかなか顔を合わせる機会がないSTiPS現役生と修了生の交流の場にもなっていました。



【案内文】
2020年8月22日(土)に、市民参加型ワークショップ「感染症対策に使われる情報技術と、わたしたちのくらし」をオンラインで開催します。


オンライン開催
市民参加型ワークショップ「感染症対策に使われる情報技術と、わたしたちのくらし」


これまで、私たちSTiPSは、自動運転、再生医療といった科学技術にまつわる課題を考える対話の場をつくってきました。

– わたしたちのくらしにどう影響するのだろう?
– どのように社会を変えていくのだろう?
– 変わらない、もしくは、変えたくないものはなんだろう?
ということをみなさんと考えてみるという場です。

今年は、新型コロナウイルスの感染拡大という状況を踏まえて、オンラインワークショップを開催することになりました。

みなさんと話し合ってみたいテーマは、「感染症対策に使われる情報技術と、わたしたちのくらし」。
接触確認アプリなど、感染症対策として社会に導入されようとしている情報技術に焦点を絞って考えてみたいと思います。

さまざまなメディアで断片的な情報を目にする日々。
オンラインにはなってしまうけれど、みんなで集って対話を重ねたら、自分だけでは捉えることができなかった視点を得ることができるかもしれません。

ちょっと先の未来を一緒に考えてみませんか。

○日時:2020年8月22日(土)13:00〜15:45(開場 12:45)
○実施形態:オンライン開催
*Zoomを利用予定です。
*参加方法の詳細はお申し込みいただいたメールアドレスに後日ご案内いたします。
*スマホやタブレットからでもご参加いただけると思いますが、PCからのご参加をお勧めします。

○プログラム(予定):
13:00- ワークショップ開始
みんなで考えてみる時間
14:15- ゲストからのコメント
14:35- 休憩
14:45- もう一度みんなで考えてみる時間
15:35- まとめ
15:45  ワークショップ終了

・今回お招きしているゲスト
新規技術の社会導入について詳しい
岸本充生さん(大阪大学データビリティフロンティア機構 教授/社会技術共創研究センター センター長)

今回の新型コロナに関して幅広いトピックの動向を見続けてきた
詫摩雅子さん(日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任/科学ライター)

・進行
八木絵香(大阪大学COデザインセンター 教授)

○参加費:無料
○対象:高校生以上であれば、どなたでも
*1つのPC(もしくはスマホやタブレット)からのご参加はお一人とさせてください。
○定員:20人程度
*事前申込み制です。
*応募者多数の場合は、参加者の多様性を考慮して事務局にて参加の可否について判断させていただくことがあります。ご了承ください。

○申込方法:ウェブフォーム(https://forms.gle/unZaJReRKREqiZ2d6)よりお申し込みください。
または、ワークショップ事務局宛にメールをお送りください。
*この申し込みフォームに入力していただいた直後に、自動で返信をする設定にはなっていません。
*入力した情報のコピーを、ご自身のメールアドレス宛に送ることはできます。
*誤ったアドレスを入力されると、こちらからの案内が届きません。よく確認をお願いします。
*参加の可否については、登録いただいたメールアドレス宛に事務局より案内をお送りいたします。

○一次申込締め切り:2020年8月5日(水)17:00
【8/6 追記】あと数人分だけ、追加の募集を行っています。  
二次申込締め切り:2020年8月10日(月)17:00


○問合わせ先&申込先
ワークショップ事務局(大阪大学COデザインセンター内)
Email stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学COデザインセンター、大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)