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成果物

星野俊也・教授



国際関係と科学技術について
教育プログラムについて



国際関係と科学技術について


私の専門は国際政治学と言われるものです。国家と国家の関係、それが基本ですけれども、最近は世界の人たちも世界中あちこち動きますから、そういうグローバル化の問題などを扱っています。

国際社会というものの中で、平和と紛争、例えばそういう問題を考えるということが重要なのではないかと思います。国際政治の中で一番避けたいものは戦争ではないでしょうか。そこにはもちろん多くの軍事技術が関わってきますね。ある意味では科学技術の粋を集めたようなものが軍事的に使われてしまう。しかしそれをいかに使われないようにするかとか、あるいは平和のために賢く使うか、そういうことは国際政治では重要なテーマだと思います。

軍事技術というものも、もちろんどんどん発展していくのですが、マンハッタン計画がまさにその端緒だったかもしれないけれども、平和的に開発されたものであっても、それが軍事的に転用されることがあります。あるいは両用技術とか汎用技術といって、本来は平和目的だけれども軍事目的にもかなり使われてしまう。マンハッタン計画は核兵器の開発に関するものですけれども、最近だとサイバー技術、情報科学分野での技術は、いろんな楽しい生活のためにも使えるけれども、使い方を間違うと、あるいは意図的に悪用しようとすると、サイバー攻撃など、かなり深刻な問題を起こすことになります。そういった問題も、われわれ国際政治の中では重要なテーマだと思いますね。

核兵器や生物兵器、化学兵器は、大量破壊兵器、“Mass Destruction”といって、一度で非常に大きな被害を人々に与えることができる。しかし本来、医学系の技術や化学あるいは生物系の技術は、核もそうですが、人々の幸せのためにも使うことができます。いかに賢くその技術を使うのかと考えるのが一つですけれど、もう一つは、国際関係ではなぜ紛争が起こるのかと考えると、相手のことをどれだけ相互理解できるのか、できないのかということになるので、国際理解を議論できるといいと思っています。例えばナショナリズムという言葉があります。決して自分の国のこと、自分の文化を大事に思うことは悪いことではないと思います。しかし、これが国家主義だとか民族主義となってしまうと相手を憎む話になってしまって、先ほど言ったような技術を軍事的に使うという話に発展していくのだと思います。われわれの分野で言えば、どうやって相互理解を進めていくのか、文化が多様であるということは人々の生活を豊かにするのであって、むしろ楽しいのだというように、われわれの視野を広げていくような議論が世の中でもできると面白くなっていくのではないかと思います。

経済的な格差というものを科学技術がどれだけ広げているのか、そこは分かりませんが、いま10億を越える人たちが、絶対的貧困というのですが、かなり厳しい貧困状態の中にいます。中には飢餓状態にある人々もいる。先ほどは紛争のファクターを申し上げましたけれども、その背景には今、地球温暖化だとか、食糧の分配が不均衡な状況になっている、そういう問題があるわけですね。あるいはエネルギーの分布が不完全、あるいは人口のバランスがよくないとか、そういう問題を考える時に、社会学的、経済学的な視点も必要なのですが、おそらく科学とか技術という側面を導入した視点というのは必要になってくると思います。例えば開発・援助をいかに効果的にするのか、そのときの科学技術、あるいは食糧の増産、あるいは環境の保全、あるいはエネルギー開発ですね。そういうところで科学技術の問題は国際関係・国際政治とかなり密接に関わってくると思います。



教育プログラムについて


大阪大学や京都大学のすごいところは、最先端の技術革新にずいぶん貢献していることです。工学系でも医学系でも生物系でもそうだと思うのですが、途上国の例えば開発の現場とか、紛争解決の現場に、意外と最先端の技術でなくても、その現地に一番フィットする、適正技術という言葉があるのですが、現地にいかに適応するような形の技術が必要なのか、そういうところを発見するというのはとても大事なことです。相手が人間であるということもありますし、文化的背景だとか生活スタイルというものがあるので、そういうものを総合的に学んでもらう。そういう意味ではフィールドワークをするとか、現地に実際行って、いろんな文化の人たちと話してみる。そういうようなことを経験しながら、ではあそこでどんな科学技術が役に立つのだろう、というふうに考えてみてほしいと思います。科学技術というのはある意味で普遍的なものだと思うのですが、適用する場所というのがいろいろあるということをぜひ学んでもらいたいということを、国際政治の観点から思いますね。

そこにいる人たちがまず男性なのか女性なのか、子供なのか赤ちゃんなのか、あるいはおじいさんなのか、あるいは障がいを持たれている方なのか、あるいは紛争の中でずっと一生暮らしてきた人なのか、または農村の人なのか漁業の人なのか、いろんな状況がありますね。そのようなことの中で適切な技術の活用の仕方、科学の活用の仕方というものを勉強することが、おそらく国際政治とか国際関係という分野ではお手伝いできるのかなというふうな気がします。

最近、人間の安全保障という言葉を使うことがあります。これは安全保障の問題を今まで国家単位で見ていたのですが、そこにいる人たちの視点で見て、何が脅威なのかとか、何が人々を不安にしているのか、それを考えてそこから人々を自由にしてあげるのか、解放してあげるのかというようなことを考えるアプローチです。そういう問題の所在、人々が抱えている問題を直視して、そこから政治的に解決できるもの、あるいは科学で解決できるもの、そういうふうに発展させて考えると、この政策のための科学というものが複眼的で包括的な視点で物事を見る、そういうアプローチを可能にしてくれるのではないかと思いますね。

また、「外交」もキーワードのひとつですね。国際政治というのが、究極のところ戦争と平和の問題で、戦争をいかに回避して、そして平和をどう実現するかということだとすると、人間の世界でも国家間でも、紛争というのは、利害の対立というのは避けられないと思います。それをいかに平和的に解決するのか、軍事的な解決ではなく。そういう時には実は外交という手段が、昔から培われてきているわけですね。政策の上でもこれは外交政策という分野があるわけですが、科学技術と外交政策というようなことを考えるセッションを構想してみたいと思いますね。