市民参加型ワークショップ「それって高すぎる?~フリマアプリ時代の売買の倫理〜」@オンライン
2021年7月30日(金)と31日(土)に、市民参加型ワークショップ「それって高すぎる?~フリマアプリ時代の売買の倫理~」をオンライン形式で開催しました。今回は、2日連続で同じテーマを扱いました。参加者は、2日間で25人。20代から70代の方に、全国各地から(関西だけでなく東京や九州からも)ご参加いただきました。昨年度に実施した3回の市民参加型ワークショップ(2020/8/22実施、2021/2/19実施、2021/2/20実施)は、主となる運営スタッフが集まるメイン会場を設置していたのですが、今回はスタッフも参加者のみなさん同様に、それぞれの自宅やオフィスから接続する形態をとりました。
対面で実施してきたこれまでの市民参加型ワークショップと同様、グループごとの対話の時間と、出てきた論点を全体で共有する時間を行ったり来たりしながら進めました。これも毎回恒例になっていますが、グループごとの対話の時間には、グループファシリテータが参加者のみなさんをサポートしました。1グループあたりの人数は、参加者3~5人とグループファシリテータ2人。グループファシリテータは、主にSTiPSの授業の受講生や修了生(そして、今回は特別に日本科学未来館からも科学コミュニケーター 3人)が担いました。

今回みなさんと一緒に議論したのは、フリマアプリでモノを売ったり買ったりするときに起こることについて。フリマアプリの登場により、消費者どうしが売買の取引をするスタイル(CtoC)が社会の中で急速に受け入れられるようになってきました。便利になったこともあるけれど、これまで気にしなくても良かったような問題が出てくることも。CtoCプラットフォームのあり方も含めて、参加者のみなさんと一緒に考えました。
フリマアプリ時代の売買の倫理を考えるにあたり、今回のワークショップに招いたゲストは、新規技術の社会導入について詳しい(そして、経済学者という顔も持っている)岸本充生教授(大阪大学データビリティフロンティア機構/社会技術共創研究センター)と、データビジネスの倫理的な課題について詳しい、長門裕介特任助教(大阪大学社会技術共創研究センター)でした。参加者全体で共有した論点や疑問点については、ゲストに適宜コメントをお願いしました。

ワークショップでは、まず、参加者のみなさんに事前に送付していた情報提供資料「対話ツール」を改めて確認しました。フリマアプリが登場したことによって、個人で売買取引が簡単にできるようになってきたこと、ときには高額な転売が社会問題にもなっていることなどを紹介した上で、今回話し合う「問い」の説明にうつりました。
前半のグループ対話では、具体的な例(農作物の価格高騰、希少な酒の転売、ファンクラブなどの限定グッズの販売)をあげつつ、モノの値段を「適正」と感じるのはどういうときなのか、「高すぎる!」と不快に感じるのはどういう理由があるのか、ということを話し合いました。

それぞれのグループでは、「売り手、買い手が納得していればよいのではないか」「フリマに出品されたことで値段が高騰して、生活必需品が入手できなくなるような状況にまでなってしまったら、公的なサポートが必要なのではないか」というような話題が出ていたようです。
休憩をはさんで、後半のグループ対話では、フリマアプリなどの技術が社会に浸透していく際に大切にしなければならないことは何か、ということについて、前半の議論やゲストのコメントを踏まえつつ話し合いました。

全体共有の時間には、グループファシリテータから、それぞれのどのような話題が出ていたのかが紹介されました。例えば、「昔からバザーなど個人間の売買の機会はあったはずなのに、フリマアプリが導入されることで加速されるものはどういうところで、なぜ起こるのだろうか」、「アプリ側にも何かしらの規制が必要なのだろうけれど、具体的にどんなルールが必要なのか?誰がルールを決めるべきなのか?ということを考え出すと難しい」、「売る側と買う側の信頼をどう構築するかが大事ではないか」など。
参加者からの意見を聞いたゲスト2人からも、コメントがありました。
岸本さんからは、「私たちが“定価”だと思っているものは単なる希望小売価格であって“正しい”価格というわけではありません。私たちはすでに“定価のない時代”を生きています。自分で価格の妥当性を判断できるようになることも大切です。経済学者の多くは転売一般には肯定的です。なぜなら、転売を規制するだけでは、供給量が増える保証はなく、逆に転売による価格上昇は、今増産すれば儲かりますよというシグナルとなり、結果として増産が促され、より早く、より多くの人の手に渡るようになるからです。もちろん個別ケースごとに事情は異なってきますが。これからは経済学リテラシーも必要不可欠になるでしょう。」というお話がありました。

もう1人のゲスト、長門さんからは、「売り手と買い手が信頼をどう構築するかということは、時代とともに変化してきている。これまでは、信用できる売り手なのかどうかを気にするような世の中だったかもしれないが、フリマアプリでは、売り手だけではなく、買い手の方の信頼もアプリによってスコア化されていたりもする。「大事にしてくれる人に売りたい」というように、売り手が買い手を選ぶことができるようにもなっている。これからの時代の道徳とか、商慣習を考えていく時期にきているのかもしれない。」という趣旨のコメントも。

後日、参加者のみなさんからいただいた感想の一部をご紹介します(*実際に届いた文章に編集を加えて掲載しています)。
「いろんな方の意見を聞き、改めて自分がどう思っているのかを考える機会につながりました。漠然と考えていることを言葉にすることの大切さを感じました。」
「技術的なことだけでなく、経済学の観点からのお話や、人権への配慮などが必要なことがわかった。誰のための、何のための技術なのか、やはり技術が進むにつれて倫理的なことがより一層問われることになるのではと感じました。」
今回は、私たちにとってだいぶ身近なテーマである、モノの売り買いや価格の話をとりあげました。他の参加者の意見に触れて、そして、ゲストの視点を得て、いつもとはまた少し違った世の中の見方ができた時間になったのではないでしょうか。
【案内文】
2021年7月30日(金)と31日(土)に、市民参加型ワークショップ「それって高すぎる?~フリマアプリ時代の売買の倫理〜」をオンラインで開催します。

私たちはこれまで、自動運転、再生医療といった科学技術にまつわる課題を考える対話の場をつくってきました。
– これからのくらしにどう影響するのだろう?
– どのように社会を変えていくのだろう?
– 変わらない、もしくは、変えたくないものはなんだろう?
ということをみなさんと考えてみるという場です。
2020年以降は、新型コロナウイルスの感染拡大という状況を踏まえ、オンライン形式でのワークショップを開催しています。
今回、みなさんとお話してみたいことは、フリマアプリでモノを売ったり買ったりするときに起こることについて、です。
オンライン開催
市民参加型ワークショップ「それって高すぎる?~フリマアプリ時代の売買の倫理〜」
メルカリやラクマなどのフリマアプリが登場した今、ひと昔前までは売ることが想像できなかったものまで売ることができるようになったり、自分自身でモノに価格をつけることが容易にできるようになりました。時には、人気の商品が高額で転売されるような状況を引き起こすことも。マスクや消毒液の価格の高騰が社会問題になったことも記憶に新しいのではないでしょうか。
私たちはどのようなときに、モノの値段を「適正」と感じるのでしょうか?
逆に、「高すぎる!」と不快に感じるのはどういうときなのでしょう?
そして、その理由は??
みんなで集って対話を重ねたら、一人では解消できなかったモヤモヤがもう少しだけことばになるかもしれません。
ちょっと立ち止まって考える時間をぜひご一緒に。
○日時:
2021年7月30日(金)18:30〜21:00(受付開始 18:00)
2021年7月31日(土)13:00〜15:30(受付開始 12:30)
*2日間とも同じプログラムです。ご都合の合う回にご参加ください。
○実施形態:オンライン開催
*Zoomを利用予定です。
*参加方法の詳細はお申し込みいただいたメールアドレスに後日ご案内いたします。
*スマホやタブレットからでもご参加いただけると思いますが、PCからのご参加をお勧めします。
○プログラム(予定)
18:00-/12:30- 受付開始
18:30-/13:00- ワークショップ開始
みんなで考えてみる時間
19:30-/14:00- ゲストからのコメント
20:00-/14:30- 休憩
20:05-/14:35- もう一度みんなで考えてみる時間
20:30-/15:00- まとめ
21:00/15:30 ワークショップ終了
・今回お招きしているゲスト
新規技術の社会導入について詳しい
岸本充生さん(大阪大学データビリティフロンティア機構 教授/社会技術共創研究センター センター長)
データビジネスの倫理的な課題について詳しい
長門裕介さん(大阪大学社会技術共創研究センター 特任助教)
・進行
八木絵香(大阪大学COデザインセンター/社会技術共創研究センター 教授)
○参加費:無料
○対象:高校生以上であれば、どなたでも。
*1つのPC(もしくはスマホやタブレット)からのご参加はお一人とさせてください。
○定員:各回20〜30人程度
*事前申込み制です。
*応募者多数の場合は、参加者の多様性を考慮して事務局にて参加の可否について判断させていただくことがあります。ご了承ください。
○申込方法:ウェブフォーム(https://forms.office.com/r/PzVgn4Z9kz)よりお申し込みください。
または、ワークショップ事務局宛にメールをお送りください。
*この申し込みフォームに入力していただいた直後に、自動で返信をする設定にはなっていません。
*誤ったアドレスを入力されると、こちらからの案内が届きません。よく確認をお願いします。
*参加の可否については、登録いただいたメールアドレス宛に事務局より案内をお送りいたします。
○申込の締切(一次):2021年7月20日(火)17:00
○問合わせ先 &申込先
STiPSワークショップ事務局(大阪大学COデザインセンター内)
Email stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)
○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)、大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
○共催:大阪大学COデザインセンター