市民参加型ワークショップ「ちょっと未来の食生活〜ゲノム編集食品から考えてみる〜」@オンライン

2021年2月20日(土)に、市民参加型ワークショップ「ちょっと未来の食生活~ゲノム編集食品から考えてみる~」をオンラインで開催しました。

この日の参加者は20人。10代から70代まで幅広い年代の方に全国各地からご参加いただきました。参加者のみなさんの対話をお手伝いしたグループファシリテータは、主にSTiPSで学んでいる学生や修了生がつとめました。

2021年度は、オンラインでのワークショップ開催に挑戦しています。全体進行をつとめる八木絵香(大阪大学COデザインセンター 教授)と運営スタッフは、リアル会場(豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデント・コモンズ セミナー室D)から映像を配信しましたが、その他、参加者のみなさんやグループファシリテータ、そして、ゲストのお二人は、それぞれ自宅やオフィスなどからZoomにつないでいました。グループでの対話の時間は、Zoomのブレイクアウトルーム機能を用いました。





対面でワークショップを実施していた2019年度の事例と同じように、グループごとの対話の時間と、出てきた論点を全体で共有する時間を組み合わせた進行でした。全体で共有した論点や疑問点については、ゲストに適宜コメントをお願いしました。


今回お招きした2人のゲストは、ライフサイエンス分野の社会的課題に詳しい標葉隆馬さん(大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授)と、ゲノム編集技術を用いて研究開発を進めている村中俊哉さん(大阪大学大学院工学研究科 教授)です。

まずは、標葉さんから、この日のテーマである「ゲノム編集食品」について、簡単な紹介がありました。ゲノム編集技術は伝統的に行われてきた育種や品種改良の延長線上にあると捉えることもできること、従来の手法よりもスピード感が違ったり、ねらいを定めた変化をピンポイントで起こしたりできる技術であること、ゲノム編集技術と一口にいってもできることに応じて規制の内容なども異なってくること、などの説明がありました。

もう1人のゲストである村中さんには、ゲノム編集技術を用いてつくり出したジャガイモを栽培している実験室の様子も見せていただきました(iPhoneのカメラをつかっての生中継!)。

ゲストからの情報提供の後は、前半のグループ対話にうつります。導入として「“ちょっと未来の食生活”と聞いて、どんなことを想像しますか?」というテーマでお話を始めてもらい、その後、「ゲノム編集食品に期待すること、不安なことは?」というテーマについて意見を出し合ってもらいました。




ここでは、以下のような話題が出ていました。
・食品ロスの削減や、収量アップになれば食料難の解決につながるのでは?
・おいしい、安定供給できる、農薬を減らせるなど、消費者にとってわかりやすいメリットのあるものなら受け入れられるのでは?
・一度、食べてから比較してみたい。
・購入するときはやはり、(ゲノム編集をつかった作物とそうではない作物を)選べるようにしてもらいたい。
・ゲノム編集技術を用いた作物を食べ続けても問題はないのか?想定されていたものとは異なる性質が出てこないのだろうか?
・画一化した食品ばかりになってしまわないだろうか?

ゲストからのコメントや追加の情報提供の後、休憩をはさんで、後半のグループ対話にうつりました。後半のテーマは、「ゲノム編集技術が社会で使われていくとき、何を大切にすればよいでしょうか?」。前半は、みなさん個人はどう思うか、ということを掘り下げて考えていただいた時間でしたが、後半は、社会全体を見渡した時に何が大切だと思うか、ということに視点をうつしていきました。



後半のグループ対話の時間には、以下のような話題が出ていました。
・ゲノム編集食品一択ではなく、選択できるようにした方が良い。
・情報開示は必須で、知りたい時に簡単に分かるようになると良い。
・良い情報も悪い情報も開示して欲しい。
・ゲノム編集食品について知る機会(教育)も必要ではないか。
・誰が、どのように作ったのかなど、プロセスが分かるようにすれば安心につながるのでは。
・昔から食べているものがなくなるのは寂しい。文化の保持の観点も大切にしたい。


ゲストの標葉さんからは、「新しい技術に社会に馴染むまでの時間は、その技術が体に入れるものであるかどうかでも変わってくる。時間をかけることへの安心感と、技術が進むスピードのバランスを取ることが必要である」というコメントがありました。村中さんからは、「ゲノム編集技術は、従来の育種の手段に追加される新しい手段の一つという認識。今までの技術が全て置き換わるというものではない。」といったコメントもありました。他にも、様々な観点からの質問が多く寄せられたのですが、時間の都合もあって全てにお答えすることはできませんでした。

今回のワークショップは、ここに集ったメンバーで何か1つの結論を出すために開催したわけではありません。いろいろな考えの人が集って対話をする中で、新しい技術に期待するのはどうして?不安に思うのはどうして?というところを掘り下げつつ、多様な見方を共有する機会になれば、と思って開催をしています。今回参加をしてくださったみなさんが、何かしら新しい見方を発見できる場になっていたのであれば、嬉しいです。



後日、参加者のみなさんからいただいた感想の一部をご紹介します。
「少人数のグループで何度か議論できたことは、相手のバックグラウンドを理解して話しを聞くことができたので良かった。」
「ゲノム編集技術は今後の社会に役に立つものだと思うが、知らないことはやはり不安なので、多くの人が語り合えるぐらいの情報開示が必要だと思った。」
「参加者の多様性があったことで、食育から食文化まで意外性のある展開があって興味深かった。」

ワークショップ終了後には、運営スタッフとグループファシリテータで振り返りの時間を設けました。普段はなかなか顔を合わせる機会がないSTiPS現役生と、遠隔地で活躍する修了生との交流の場にもなっていました。


【案内文】
2021年2月20日(土)に、市民参加型ワークショップ「ちょっと未来の食生活〜ゲノム編集食品から考えてみる〜」をオンラインで開催します。

私たちはこれまで、自動運転、再生医療といった科学技術にまつわる課題を考える対話の場をつくってきました。
– これからのくらしにどう影響するのだろう?
– どのように社会を変えていくのだろう?
– 変わらない、もしくは、変えたくないものはなんだろう?
ということをみなさんと考えてみるという場です。

今回のワークショップのテーマは、「ちょっと未来の食生活」。




オンライン開催
市民参加型ワークショップ「ちょっと未来の食生活〜ゲノム編集食品から考えてみる〜」


みなさんは普段、何を気にして食べ物を買っていますか?
価格、賞味期限、原材料名、原産地、添加物、カロリー、遺伝子組換え・・・
そういった中で、2020年のノーベル賞で話題にもなった「ゲノム編集」という新しい技術も、将来、判断材料の一つになるかもしれません。

たとえば、トマト。ゲノム編集技術を用いてつくられた新しいトマトが店頭に並ぶ日も、すぐ目の前、というニュースもありました。

食の様々な課題を解決できるという期待がありますが、一方で、安全性は? 社会・経済・環境への影響は?? など、まだ私たちがよくわかっていないことも。

ゲノム編集食品の話題をきっかけにして、未来の食生活を一緒に考えてみませんか?


○日時:2021年2月20日(土)13:30〜16:00(受付開始 13:00)
○実施形態:オンライン開催
*Zoomを利用予定です。
*参加方法の詳細はお申し込みいただいたメールアドレスに後日ご案内いたします。
*スマホやタブレットからでもご参加いただけると思いますが、PCからのご参加をお勧めします。

○プログラム(予定):
13:00- 開場
13:30- ワークショップ開始
    みんなで考えてみる時間
14:30- ゲストからのコメント
15:00- 休憩
15:05- もう一度みんなで考えてみる時間
15:30- まとめ
16:00  ワークショップ終了

・今回お招きしているゲスト
ゲノム編集技術を用いて研究開発を進めている 
村中俊哉さん(大阪大学大学院工学研究科 教授)

ライフサイエンス分野の社会的課題に詳しい  
標葉隆馬さん(大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授)

・進行
八木絵香(大阪大学COデザインセンター/社会技術共創研究センター 教授)

○参加費:無料
○対象:高校生以上であれば、どなたでも。
*1つのPC(もしくはスマホやタブレット)からのご参加はお一人とさせてください。
○定員:20-30人程度
*事前申込み制です。
*応募者多数の場合は、参加者の多様性を考慮して事務局にて参加の可否について判断させていただくことがあります。ご了承ください。

○申込方法:ウェブフォーム(https://forms.gle/a4dnqHQWnGggbG9MA)よりお申し込みください。
または、ワークショップ事務局宛にメールをお送りください。
*この申し込みフォームに入力していただいた直後に、自動で返信をする設定にはなっていません。
*入力した情報のコピーを、ご自身のメールアドレス宛に送ることはできます。
*誤ったアドレスを入力されると、こちらからの案内が届きません。よく確認をお願いします。
*参加の可否については、登録いただいたメールアドレス宛に事務局より案内をお送りいたします。

○申込の締切(一次):2021年2月3日(水)17:00

○問合わせ先 &申込先
STiPSワークショップ事務局(大阪大学COデザインセンター内)
Email stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)、公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学COデザインセンター
○後援:大阪大学先導的学際研究機構産業バイオイニシアティブ研究部門、ジャガイモ新技術連絡協議会(農水省「知」の集積と活用の場 産学官連携協議会 研究開発プラットフォーム)
○協力:大阪大学共創機構 社学共創部門

*このワークショップは、JST-RISTEX『科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム』「萌芽的科学技術をめぐるRRIアセスメントの体系化と実装(研究代表者:標葉 隆馬)」の支援のもと開催します。