つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)#4 国立情報学研究所 副所長/弁理士・篠崎資志さん



2020年1月14日(火)、国立情報学研究所で副所長をされている篠崎資志さんをお招きして、セミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)」第4回が開催されました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。会場には、授業の履修生に加え、セミナーに興味を持った学生や学外からお越しの方など13人が集いました。

今回篠崎さんは「理科系人間にとって行政・法律系の仕事は魅力的か?」というテーマでお話しして下さいました。主な内容は、篠崎さんの自己紹介、専攻や就職先をどのように選択したのか、弁理士とはどういう仕事なのか、ということでした。

篠崎さんは約30年前に東京大学の原子力工学科を卒業し、科学技術庁に就職されました。科学技術庁(後に文部科学省)では主に原子力、エネルギー、情報科学、海洋科学、先端医科学などを扱う部署で、科学技術政策立案や研究開発助成を担当されていました。この他に科学技術振興機構や海洋研究開発機構でも勤務されていたそうです。そして、現在は国立情報学研究所で副所長として新規事業立案や組織マネジメント等を担当されています。研究助成に携わるなかで、研究開発と知的財産権の関係に関心を持ち、弁理士試験にも挑戦されたのだそうです。昨年4月に弁理士登録されました。

学生の頃、専攻分野や就職先をどのような理由で選択したのかもお話し下さいました。原子力工学を専攻したのは、幼少期のオイルショックの経験がきっかけだそうです。エネルギー問題に関心を持って原子力工学を志したものの、大学に入学し勉強を進めていくなかで、原子力工学は社会との相互作用が非常に大きいということを痛感されました。そして、研究者・技術者だけではエネルギー問題のような社会的な課題を解決するのは難しいのではないかと考えるようになったそうです。そこで、社会との相互作用を経験できるのでは?という期待を抱き、科学技術庁に入庁することに。当時の科学技術庁の業務の半分近くは原子力関連だったのでご自身の強みを生かせそうな場であるともお考えになったそうです。また、海外勤務のチャンスがあることも魅力的であったとのことでした。

実際に官庁で働き始めてみると、1年目は雑用の嵐で省内の”伝書鳩”として1日中書類を持って走り回っていたそうです。電子メール等が普及した現在からすると想像しにくいことですし、かなり辛かったそうですが、当時の状況を考えると必要な業務であったと振り返られていました。2年目からは頭をつかう仕事も任されるようになり、法律改正を担当。その後は期待していた通り2回の海外勤務(ワシントン、ウィーン)を経験されました。

課長補佐になると様々なオピニオンリーダーと直接会って話す機会も増えたそうですが、怒られることも多く、学生時代に教授から「役人は威張れるぞ」と言われて抱いていたイメージとは程遠い現実だったそうです。また、実務では原子力専攻時代に学んだ知識を使うことはほぼなく、「役人は全ての分野を広く浅く迅速に把握すべし」とよく言われたそうです。

また、篠崎さんが就職された頃と現在では世界の時価総額ランキングに名を連ねる企業ががらっと変わっていることをデータで示された上で、「万物は流転する」という先人の言葉を強調されていました。では、そんな流転する環境に我々はどのように対応していけばよいのでしょうか?篠崎さんはご自身の経験に基づいて「自分の専門(タテ)をコアとしつつ、それにプラスして専門外の幅広い分野(ヨコ)に関心を持つ」というアドバイスをいただきました。

弁理士という仕事についてもお話ししていただきました。弁理士とは、簡単に言うと知的財産の専門家です。科学技術を扱う行政官と弁理士には、「技術と法律を扱う」「論文以外の研究開発の価値を探求する」等いくつか共通点があると考え、弁理士試験を受けようと決意されたそうです。今後は、知財業界から見た有望技術の発掘や、IPランドスケープの推進にも尽力していきたいとのことでした。

最後に、今回参加していた学生へのアドバイスとして
・目先の流行り廃りに惑わされない
・色々なことに広く浅く積極的に関心を持つ(ヨコ)
・オンリーワンと言えるような自分磨きを怠らない(タテ)
・法律的思考や法律との関わりを予見する
という言葉をいただきました。

行政官として長くキャリアを積んできた方から直接お話しを聞くことのできる機会はあまりありません。大学にいるときの科学との関わり方、と、社会に出てからの科学との関わり方の違いや、流転し続ける世の中で生きていくためのアドバイスをお聞きすることができ、非常に有意義な時間でした。

文:高山 美里(理学研究科 博士後期課程2年)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員



【案内文】
2020年1月14日(火)に、大阪大学吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロンにおいて、セミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)」の第4回を開催します。
今回のゲストは、国立情報学研究所 副所長の篠崎資志さんです。

もともとは理系出身という篠崎さん。長く、中央省庁等で科学技術政策に関わるお仕事をされてきました。そして、弁理士の資格もお持ちです。

政策立案をするという立場から、科学技術と行政・法律・社会(ときに政治)との関係はどのように見えていたのか、理系出身というキャリアはどのように活きたのか、などをお伺いします。




■第59回STiPS Handai研究会
○題目:つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)#4
○ゲスト:篠崎 資志 氏(国立情報学研究所 副所長・教授/弁理士)
○日時:2020年1月14日(火)14:40〜16:10(開場 14:30)
○場所:大阪大学吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロン
○対象:どなたでも
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、学内、学外を問わず、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。
○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:
この「ウェブフォーム」への入力をお願いします。
または、
件名を「1月14日参加申込」として、以下の項目を明記の上、メールでお送りください。
・氏名(ふりがな)
・所属
○申込先・問い合わせ先:stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学COデザインセンター

概要
科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたい…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方」を開催します。

マスメディアや研究機関、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事を創り出すということ
などについてお話を伺いながら、参加者全員で議論します。

大阪大学COデザインセンターが開講する2019年度冬学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催しますが、この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。


プログラム
1)はじめに
2)ゲストによる話題提供「理科系人間にとって行政・法律系の仕事は魅力的か?」(30分程度)
3)質疑応答&ディスカッション(50分程度)

ゲストプロフィール

東京大学原子力工学科を卒業後、1986(昭和61)年に科学技術庁へ入庁。文部科学省生涯スポーツ課長、研究振興戦略官(先端医科学担当)、JST社会技術研究開発センター企画運営室長、文部科学省研究開発局原子力課長、環境エネルギー課長、JST参事役(SIP推進準備担当)、海洋研究開発機構理事などを経て、本年5月より現職。主として組織マネージメント、組織改革を担当。平成30年度弁理士試験最終合格。実務修習を経て本年4月に弁理士登録。



本シリーズについて
「つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)」は以下のようなスケジュールで実施します。

#1 12月17日(火) 毎日放送 報道局・大牟田智佐子さん
#2 12月24日(火) 大阪大学共創機構・本田哲郎さん
#3 1月7日(火) 地域ビジネス実践者/起業家・八百伸弥さん
#4 1月14日(火) 国立情報学研究所 副所長/弁理士・篠崎資志さん
#5 1月21日(火) 哲学者/カフェフィロ 副代表・松川えりさん



FlyerrA4_STiPSHandai_2019win(PDF:378 KB)