つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)#3 地域ビジネス実践者/起業家・八百伸弥さん


2020年1月7日(火)、科学技術と社会のあいだで活躍する実践者から学ぶセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)」第3回を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。この日の会場には、学内外から20人の参加者が集まりました。

今回のゲストは、地域活性化を目指す起業家 八百伸弥さんでした。八百さんは、大阪大学の基礎工学研究科の修了生です。そして、学生時代には大阪大学COデザインセンターの前身にあたるコミュニケーションデザイン・センター(CSCD)の授業を受けていたそうです。

まずは、どのような経緯で起業家になったのかお話いただきました。八百さんは大学ではロボット工学を学んでいました。当時は、ロボット技術者を目指していたのですが、人型ロボットの転倒事故のニュースを見聞きしたことがきっかけで、二足歩行のロボットの必要性に疑問を抱くようになったそうです。その頃、CSCDと出会い、主専攻以外の授業(科学技術コミュニケーションやまちづくりに関わるもの)を受講し、ロボット工学とは違った視点を得たとのことでした。

修士課程修了後は、経営コンサルティング会社で、ビジネス(特に中小企業を対象としたもの)に関する知識を学びながら、地域活性化のために何ができるか考え、その後農業ビジネスを行う「みつヴィレッジ」を起業した八百さん。どのようにして「みつヴィレッジ」の起業に至ったかについて、ご紹介いただきました。

その中で、参加者に投げかけられた質問は、「「地域活性化」の定義って何だと思いますか?」というもの。会場からいろいろな意見が出ましたが、八百さんの中での定義は「ヒト、モノ、カネが外から入ってきて、地域で循環すること」だそうです。この定義を実現するにあたって、八百さんは大学で学んだロボット工学の知識を活かし、農業をシステム化することが有効であると感じたそうです。

農業が抱えている課題としては、担い手が高齢化していて後継ぎがいない、効率化が必要な部分が多いといったものがあげられます。行政も補助金等で新規参入を促していますが、農業は経験がものをいう部分もあり、長続きする農家が少ないとのことでした。ただ、かつては経験でしかわからなかったもの(例えば水やりのタイミング等)もITを使うと管理しやすくなることもあるとのことで、農業への新規参入のハードルを下げるための取り組みを進めていらっしゃいます。

「みつビレッジ」で最初に生産を始めたのはトマトです。なぜトマトだったのかというと、それは、家庭内で1年間に1人あたりが消費している金額がトップの野菜だったから、です。市場規模が大きいトマト。競争相手も多くなるわけですが、生で食べる、そして、購買頻度が高いという商品特性から、新規に参入しても勝負できると考えたとのことでした。「農業にちゃんとマーケティングをいれる」ということの大切さを教えていただきました。

このように、大学とコンサルティング会社で得た、ロボットとビジネスの知識を活かしながら「みつヴィレッジ」の起業に至ったとのことでした。八百さんは、「みつヴィレッジ」の他にも複数の企業に関わりながら、地域活性化と農業の産業化に取り組んでいきたいとおっしゃっていました。

八百さんはとても合理的に決断を考える方だなと感じました。自分が将来的に起業することを想定し、ビジネスについて学ぶために中小企業向けのコンサルティング会社に入社したというエピソードや、野菜の特性や市場の分析結果を考慮した上で、扱う農産物を戦略的に選んだという経緯などをお聞きして感銘を受けました。

文:矢谷 元春(工学研究科 博士前期課程1年)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員



【案内文】
2020年1月7日(火)に、大阪大学吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロンにおいて、セミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)」の第3回を開催します。
今回のゲストは、地域ビジネス実践者/起業家の八百伸弥さんです。

八百さんは、阪大 基礎工学研究科の修了生です。
大学院で学んだロボットという分野の取り組み、自分が人生をかけて取り組みたいテーマであった地域活性化を共に満たすビジネスとして、農業を中心とした様々な展開をされています。

自分の専門をどのように社会で活かすのか、新しい仕事をどのように創り出していくのか、いろいろなことをお伺いしてみましょう。


■第58回STiPS Handai研究会 ○題目:つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)#3
○ゲスト:八百伸弥 氏(株式会社みつヴィレッジ 代表取締役/株式会社リバースヴィレッジ 代表取締役/株式会社JAMPS 生産設備・技術開発支援部長)
○日時:2020年1月7日(火)14:40〜16:10(開場 14:30)
○場所:大阪大学吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロン
○対象:どなたでも
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、学内、学外を問わず、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。
○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:
この「ウェブフォーム」への入力をお願いします。
または、
件名を「1月7日参加申込」として、以下の項目を明記の上、メールでお送りください。
・氏名(ふりがな)
・所属
○申込先・問い合わせ先:stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)
○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学COデザインセンター

概要 科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたい…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方」を開催します。

マスメディアや研究機関、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事を創り出すということ
などについてお話を伺いながら、参加者全員で議論します。

大阪大学COデザインセンターが開講する2019年度冬学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催しますが、この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。


プログラム 1)はじめに
2)ゲストによる話題提供「ロボット×農業×地域の活性化×世界」(30分程度)
3)質疑応答&ディスカッション(50分程度)
ゲストプロフィール 大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻でロボット工学を学ぶ。
博士前期課程を修了し、株式会社船井総合研究所を経て独立。姫路の実家に戻り、農業の法人である株式会社みつヴィレッジを設立。
2017年には新たに株式会社リバースヴィレッジを設立し、農産物直売所/カフェ/イベントスペースとして「ものづくりカフェ」を開設。
大学院で学んだロボット工学を農業ビジネスやカフェの運営に生かし、地域の活性化を目指した活動を実践している。



本シリーズについて 「つなぐ人たちの働き方(2019年度冬)」は以下のようなスケジュールで実施します。

#1 12月17日(火) 毎日放送 報道局・大牟田智佐子さん
#2 12月24日(火) 大阪大学共創機構・本田哲郎さん
#3 1月7日(火) 地域ビジネス実践者/起業家・八百伸弥さん
#4 1月14日(火) 国立情報学研究所 副所長/弁理士・篠崎資志さん
#5 1月21日(火) 哲学者/カフェフィロ 副代表・松川えりさん


FlyerrA4_STiPSHandai_2019win(PDF:378 KB)