つなぐ人たちの働き方(2019年度夏)#5 科学コミュニケーター・本田隆行さん



2019年7月16日(火)、フリーランス科学コミュニケーターの本田隆行さんをお招きして、科学技術と社会のあいだで活躍する実践者から学ぶセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2019年度夏)」第5回を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。この日の会場には21人が集まりました。大阪大学の学生や教職員だけでなく、学外からお越しの方も参加されていましいた。

本田さんには、最初の30分間でご経歴とフリーランスの「科学コミュニケーター」という職業について紹介していただきました。本田さんは大学院で惑星科学を学んだ後、研究の道には進まず、枚方市役所に就職。卒業後5年間は地方公務員としてお仕事をされていました。その後、ふとしたきっかけで応募した日本科学未来館(以下、未来館)に科学コミュニケーターとして採用されました。展示解説をしたり、時にはテレビ番組に出演したりする(NHK Eテレ「サイエンスZERO」の企画で初代キングオブサイエンスコミュニケーターに選ばれる!)など、多岐にわたって活躍されました。

しかし、未来館の科学コミュニケーターは任期が最長5年。その後の進路を考えながら、あることを疑問に思ったのだそうです。これまでに未来館から巣立っていった科学コミュニケーターは100人以上、大学や博物館などで実施されている科学コミュニケーター養成講座を受講している人もかなりいるはず。にも関わらず、実際に社会で「科学コミュニケーター」として活躍している人に出会ったことがあるだろうか?と。「もし未来館の外に出たら、誰に、どんな風に必要にされるのだろうか」ということを自分で確かめるために、フリーランスの科学コミュニケーターになることを決意したのだそうです。「3年やってだめだったらこの職業には需要がない」と、覚悟を決めて始めたフリーランスの科学コミュニケーターですが、今年で5年目を迎え、現在では科学館の展示監修やイベントの司会、ワークショップの企画実施、執筆など幅広いお仕事をされています。

本田さんの考える科学コミュニケーターとは、「間(あいだ)」をつなぐ仕事をする人です。専門家と一般市民との間、展示発注者と受注者との間、など様々な「間」に入り両者をつなぐ仕事だと言います。しかし、本田さんがよく受けるのは「科学コミュニケーターって結局何ができるの?」という質問です。この質問に答えるのは非常に難しいそうです。というのも、本田さんのお仕事のスタンスは、依頼者のお困りごとに合わせて自分ができることを提供する、というものだからです。一方、一緒に仕事をしたことのある依頼者からは「こういう人がいると本当に助かります!」という言葉をもらえるそうです。その度に自分の立場の必要性を感じるものの、新たな依頼者に出会うとまた「何ができるの?」と聞かれてしまう…。科学コミュニケーターの価値にどのように気付いてもらうのかが今後の課題だと考えておられました。

本田さんからのお話の後、質疑応答が行われました。まず「初対面の人と話をする時に意識することは?」という質問に対して、「とにかく聞くこと。そして相手に合わせて自分の立ち振る舞いを柔軟に変えること。」とおっしゃっていました。このようなコミュニケーション能力は市役所時代に培われたものだそうで、科学コミュニケーターだけでなく、どの職業においても重要なものだとおっしゃっていました。

また、フリーランスとして生きていくために必要なことは、相手が欲するものをいかに提供できるかである、という話題にもなりました。様々な依頼に応えるために、自分の「武器」をできるだけ多く持つように努力しているとお話されていました。 

さらに、「本田さんの目指すところは?」という質問に対しては、「科学コミュニケーターとしてのロールモデルになりたい。そもそも科学コミュニケーターという人がいることが認知されなければ、必要なのかそうでないのか、どういう役割を担うべきなのかという議論すらできない。」というお答えでした。この他にも多くの質問が飛び交い、活発な意見交換が行われました。

本田さんは、ご自身の経歴やお仕事についてフランクにお話してくださいました。「科学コミュニケーター」という今までにない新たな立場で科学と社会をつないでいる本田さんのお話は大変興味深く、「つなぐ仕事」について新たな視点を得ることができました。

文:藤原 里英子(理学研究科生物科学専攻 博士前期課程)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員



【案内文】
2019年7月16日(火)に、大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデント・コモンズにおいて、セミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方(2019年度夏)」の第5回を開催します。
今回のゲストは、科学コミュニケーターの本田隆行さんです。

本田さんは、フリーランスの科学コミュニケーターという日本ではとても珍しい立ち位置の方です。
「日々、どんなお仕事があるの?」
「どうしたら『科学コミュニケーター』になれるの?」
本田さんには、ご自身の専門が活きる仕事をどのように創り出しているのかをお伺いします。




■第54回STiPS Handai研究会
○題目:つなぐ人たちの働き方(2019年度夏)#5
○ゲスト:本田 隆行 氏(科学コミュニケーター(フリーランス))
○日時:2019年7月16日(火)14:40~16:10(開場 14:30)
○場所:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構
 ステューデント・コモンズ2階 セミナー室A

○対象:どなたでも
 *全学部生・全研究科大学院学生を対象とした授業の一環として実施します。
 *この日は、学内、学外を問わず、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。
○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:
この「ウェブフォーム」への入力をお願いします。
または、
件名を「7月16日参加申込」として、以下の項目を明記の上、メールでお送りください。
・氏名(ふりがな)
・所属
○申込先・問い合わせ先:stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学COデザインセンター


概要
科学や技術に関係する仕事がしたいけれど、研究者になりたいわけではない…
大学で学んだ専門を活かせる仕事に就きたい…

こんなモヤモヤした将来への悩みを抱えている方にお届けするセミナーシリーズ「つなぐ人たちの働き方」を開催します。

マスメディアや研究機関、行政機関といった、多彩な現場で活躍されているゲストから、
・異なる領域の間で働くということ
・自分の専門を現場で活かすということ
・専門が活きる仕事を創り出すということ
などについてお話を伺いながら、参加者全員で議論します。

大阪大学COデザインセンターが開講する2019年度夏学期授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催しますが、この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。


プログラム
1)はじめに
2)ゲストによる話題提供「『科学コミュニケーター』として働く、とは?」
3)質疑応答&ディスカッション

ゲストプロフィール
大学時代の専攻は地球惑星科学。
地方公務員事務職(枚方市役所)・国立科学館勤務を経て、国内でも稀有なフリーランスの科学コミュニケーターとして活動中。
展示プランニングや科学実演の実施・監修、大学講師やイベントファシリテーター、サイエンスライティングなど様々な仕事をこなす。
著書に「宇宙・天文で働く」(ぺりかん社 2018)。



本シリーズについて
「つなぐ人たちの働き方(2019年度夏)」は以下のようなスケジュールで実施します。


#1 6月18日(火) NHKエデュケーショナル プロデューサー・竹内慎一さん
#2 6月25日(火) 株式会社毎日放送 報道局 記者・奥西亮太さん
#3 7月2日(火) 京都大学 学術研究支援室 URA・白井哲哉さん
#4 7月9日(火) 大阪府健康医療部 食の安全推進課・西岡麻須美さん
#5 7月16日(火) 科学コミュニケーター(フリーランス)・本田隆行さん


Flyer_190618-0716(PDF: 381KB)