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【国際会議参加報告】International Conference on Responsible Research and Innovation in Science, Innovation and Society 2017(RRI-SIS 2017)

 2017年9月25-26日に、イタリア学術会議(Consiglio Nazionale delle Ricerche)で開催された国際会議「International Conference on Responsible Research and Innovation in Science, Innovation and Society 2017 (RRI-SIS 2017)」に、平川秀幸教授が参加しました。



 *以下の文章は、出張中の平川教授から届いた、会議への参加レポートを元にしたものです。

RRIとは
 「Responsible Research and Innovation(責任ある研究・イノベーション: RRI)」は、社会的・倫理的に望ましい研究成果やイノベーションが生じるよう、研究やイノベーションの過程において、研究・イノベーションの正負の帰結の様々な可能性を探る「予見(anticipation)」、社会の多様なステークホルダーの参加・議論を活かす「熟議(deliberation)」、社会のニーズや課題、期待や懸念に応える「応答性(responsiveness)」、これらのその都度の結果を研究・イノベーションのプロセスにフィードバックし、研究・イノベーションの前提や目標、方法などの見直しをはかる「反省(reflection)」といった営為を重視する研究・イノベーションのあり方のことです。

 RRIの推進は、EUの科学技術・イノベーション政策の基本計画であるHorizon 2020における推進事業の一つになっています。Horizon 2020では、以下の6つをRRIの柱にしています。
・Public Engagement (多様なステークホルダー・市民の関与・参加)
・Gender Equality (ジェンター平等)
・Science Education (科学教育)
・Ethics (倫理)
・Open Science (オープンサイエンス)
・Governance (ガバナンス)

会議の開催形式について
 「RRI-SIS」という名を冠した会議は、2014年11月にもローマで開催されています。当時の会議「SIS-RRI: Science, Innovation and Society: achieving Responsible Research and Innovation」は、RRI推進事業の旗揚げとして、欧州委員会も共催した大きな(400~500人程度が参加)もので、3日間の会期中に、6つのワークショップが開催されていました(平川教授は3年前の会議にも参加)。 今回の会議は、Horizon 2020で採択されたプロジェクトの一つ、MARINAプロジェクト(Marine Knowledge Sharing Platform for Federating Responsible Research and Innovation Communities)が主催した小規模なもので、40~50人が参加していました。

参加者とテーマの多様性
 3年前と違って、参加者とテーマがそれぞれ多彩になったという印象を持ちました。セッションのテーマも、中等教育を含む教育現場での取り組みもあれば、ジェンターや倫理に焦点を当てたもの、産業界との連携に焦点を当てたものなど様々です。

 これに応じて参加者も多様な分野から集まっており、「RRI」というアンブレラ・タームのもとで、多様な分野の研究者が自分たちの研究を表現し、RRIの取り組み例として研究助成され、評価がなされるようにしているという印象を受けました。3年前との大きな違いは、現役の自然科学系研究者の多さです。RRI推進事業の旗揚げが主旨だった3年前には「ここに何人自然科学者がいるんだ。彼らを巻きこなければ。」という問いかけが会議のクロージングセッションでなされていましたが、実際に動き出したプロジェクトの研究報告がメインになった今回は「君たちのプロジェクトには何人の社会科学者が入っているんだ。」という質問が目立つようになりました。

女性参加者の多さ
 参加者については男女比がほぼ半々だったのが印象的でした。欧州では、科学技術・イノベーションが主題の会議でも、とにかく女性比率が高く、これは日本ではなかなか見られない光景です。こうした女性比率の高さは、EUにおける研究者社会全体でジェンダー平等が日本に比してそれだけ進んでいるということではないでしょうか。


産業界の巻き込みという課題
 RRIは、いまのところ、大学や公的研究機関、教育機関、行政機関、NGO等の市民社会組織のあいだの取り組みが主であり、一般的に、産業界からの関与・参加は弱いのが現状です。そこには、RRIの理念と市場経済における様々な価値やビジネス慣習との緊張関係も存在しているのでしょう。この点に関して、会議でも、いかにRRIと既存の経済・産業パラダイムの接合をはかるか、またその難しさは何か、どうしたらいいかといった問いが繰り返されていました。たとえば、持続可能性ビジネスにおける起業家を対象にして、彼らの事業の社会的・倫理的ポテンシャルを正負さまざまな角度から検討してもらい、気づきを得てもらうワークショップを設計・開催したグループの発表もありましたが、そうした取り組みでは、そもそもどうやって、ワークショップのような場に産業界の人に来てもらうか、彼らにとっての利益やインセンティヴは何か、それを積極的に示さないといけないだろうといった議論がありました。

 また、RRIと既存の経済・産業では、理念や価値、使うボキャブラリーも違っています。共通点を探りつつ、言葉の「翻訳」をする努力が必要だとする指摘もありました。