科学技術と社会のつなぎ方 -ゲノム編集を活用!?ミライの食品-(STiPS Handai研究会)

2019年7月23日(火)、大阪大学吹田キャンパス センテラス3階 センテラス・サロンにおいて、STiPS Handai研究会「科学技術と社会のつなぎ方 -ゲノム編集を活用!?ミライの食品-」を開催しました。工学研究科の学生や研究者を始め、学内外からあわせて29人が会場に集いました。

科学技術と社会のつなぎ方シリーズは、「異なる分野(主に理工系と人文社会系)の研究者同士のディスカッションの場をつくり、それを大阪大学の学生にも開く」ことを目指しています。2019年4月にはその第一弾となる「宇宙政策の未来について考える」を開催しました(開催レポートはこちらから)。続く今回はゲノム編集技術を取り上げました。

この日の登壇者は、ゲノム編集技術を使った作物の開発を進めている村中俊哉教授(大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻)と、食品をめぐる科学技術と社会の動きについて研究している平川秀幸教授(大阪大学COデザインセンター)でした。お二人それぞれからの話題提供の後、八木絵香准教授(大阪大学COデザインセンター)の進行で会場を交えたディスカッションの時間を持ちました。


村中先生から主にお話しいただいたのは、ご自身の研究室で取り組まれている、ゲノム編集技術を用いて開発している毒のないジャガイモに関わる研究について。ゲノム編集技術と遺伝子組換え技術の類似点や相違点について、品種改良や育種の観点から詳しい説明がありました。そしてこのゲノム編集技術を用いた食品開発を進めていくために連絡協議会を立ち上げたこと、技術開発者と消費者や生産者、流通に関わる人などさまざまな立場の人たちが話し合うという取り組みを始めたことについても紹介されました。


平川先生からは、遺伝子組換え食品をめぐる規制などのこれまでの動きについて丁寧な解説がなされました。その流れや教訓を踏まえてゲノム編集技術を用いた食品をどのように扱っていくべきかについて、いくつかの論点が示されました。


会場からは、「消費者はゼロリスクをシビアに要求しすぎているのではないか?」「ガレージバイオ、DIYバイオについてどう考えているか?」「ゲノム編集技術はリスクが過大に注目されていないだろうか?」といった質問やコメントがありました。


終盤には、村中先生と村中研究室で研究に取り組む大学院生 世戸口貴宏さんによるデモンストレーションが行われました。トイレットペーパーをゲノムに、そして、ペーパーに貼られた丸いシールを遺伝子に見立てて、既存の育種に用いられてきた技術とゲノム編集技術の違いを説明するというものでした。


事後アンケートには、「安全性のための論争をするだけではなく、その技術をつかってどのような社会にしていきたいのかということを考えることが大事ということが話されていたことが新鮮だった。」「新しい技術を活用する時のメリットとは、誰のどんなメリットになりうるものなのかということを考えていかなければならない。」というような感想が書かれていました(*実際にアンケート用紙に記入された文章に編集を加えて掲載しています)。

異なる分野の研究者が出会うことによって、お互いに新しい視点や考え方を得られるような対話の場づくりをこれからも継続していきたいと思っています。


【案内文】
2019年7月23日(火)に、大阪大学吹田キャンパス センテラス3階 センテラス・サロンにおいて、STiPS Handai研究会「科学技術と社会のつなぎ方 -ゲノム編集を活用!?ミライの食品-」を開催します。

「科学技術と社会のつなぎ方」シリーズの目的は、異なる分野(主に理工系と人文社会系)の研究者同士のディスカッションの場をつくり、それを学生にも開くこと、です。
4月23日に開催した「科学技術と社会のつなぎ方 -宇宙政策の未来について考える-」に続く第二弾は、ゲノム編集技術がテーマです。

フライヤーはこちら(PDF:3.8MB)から


ゲノム編集技術を活用した作物が食卓にあがる日も、もう目の前です。
今、さまざまなルール作りが行なわれている真っ最中。

「ゲノム編集技術をつかっています」という表示はすべき?
安全性はどう担保されるの?

新しい技術が応用された作物や食品が社会に導入されるときには、どのようにことを配慮すべきなのでしょう?
みなさんと考えてみたいと思います。

■第55回STiPS Handai研究会 ○題目:科学技術と社会のつなぎ方 -ゲノム編集を活用!?ミライの食品-
○ゲスト:村中 俊哉(大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻 教授)
     平川 秀幸(大阪大学COデザインセンター 教授)
○日時:2019年7月23日(火)17:00~18:30(開場 16:45)
○場所:大阪大学吹田キャンパス センテラス3階 センテラス・サロン

○対象:主に、大阪大学教職員・学生のみなさん
・新規技術が社会にどう導入されるのかが気になるという方
・ゲノム編集に関わる研究をされている方
・科学コミュニケーションに関心のある方
など、ぜひどうぞ。

○参加:事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:
こちらの「ウェブフォーム」への入力をお願いします。
または、
件名を「7月23日参加申込」として、以下の項目を明記の上、メールでお送りください。
・氏名(ふりがな)
・所属
○申込先・問い合わせ先:stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp([at]は@にしてください)
○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)
○共催:大阪大学大学院工学研究科、大阪大学COデザインセンター

プログラム  進行:八木 絵香(大阪大学COデザインセンター 准教授)
17:00- 趣旨説明
17:10- ゲストからの話題提供
     村中 俊哉(大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻 教授)
     平川 秀幸(大阪大学COデザインセンター 教授)
17:40- 質疑応答&ディスカッション
ゲストプロフィール 村中 俊哉(大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻 教授)
京都大学農学部農芸化学科卒業。住友化学や理化学研究所などを経て現職。専門は、植物バイオテクノロジー、植物代謝生化学。日本ゲノム編集学会理事なども務める。

平川 秀幸(大阪大学COデザインセンター 教授)
専門は、科学技術社会論(科学技術ガバナンス論、市民参加論)。もともとはバリバリの理科少年だったが、理学修士をとったところで文転。2回目の修士課程(博士前期課程)で哲学、科学思想を学び、博士後期課程から守備範囲を、社会問題寄りにシフトする。著書に『科学は誰のものか―社会の側から問い直す』(日本放送出版協会)など。