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科学技術「反省」白書にこめた思い「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)(37)開催



 2018年1月16日(火)、内閣府宇宙開発戦略推進事務局審議官の行松泰弘さんをお招きして、第37回「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)「科学技術『反省』白書に込めた思い」を開催しました。この日の会場(大阪大学吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階交流サロン)には、10人が集まりました。授業「科学技術コミュニケーション入門B」の受講者だけではなく、学外からお越しの方や大阪大学の教員も参加しました。

 行松さんにはまず40分間ほどで、自己紹介とこれまでに取り組まれたお仕事の紹介をしていただきました。行松さんは現在、内閣府宇宙開発戦略推進事務局に所属されていますが、最初は科学技術庁からそのキャリアをスタートされています。入庁後から約30年の間におよそ20の部署を経験し、様々な業務に取り組まれてきたそうです。例えば、理化学研究所や大型放射光施設(Spring-8)といった科学技術の推進・整備のための業務や、原子力防災対策や放射性廃棄物対策といった科学技術の利用に伴って生じる社会課題への対策に関わったりされたのだそうです。また、外務省への出向経験もお持ちで、在露大使館科学担当としてロシアに滞在されたこともあるそうです(集中的な特訓を受けてわずか三ヶ月でロシア語の新聞記事を読めるようになったのだそう)。2001年以降は文部科学省で同じく科学技術政策に携わり、生涯学習やスーパーサイエンスハイスクール(SSH)などの教育系の事業も手がけられました。そして、2012年には今回の研究会のタイトルでもある科学技術白書の執筆において中心的な役割を担われています。

 科学技術白書は、各年代において、どのような時代背景及び政策的意図の下でいかなる施策が講じられていたのかを記録する、歴史のテキストのような役割を担っています。今回のタイトルの一部である「科学技術『反省』白書」は2012年6月の読売新聞の見出しから引用されていますが、『反省』とあるように、2012年版科学技術白書は東日本大震災をきっかけに顕在化した科学技術に関する様々な課題や教訓を記したものになっています。

 行松さんにはこの課題や教訓について詳しくお話していただきました。東日本大震災により顕在化した課題として、1)リスク評価等のリスクへの対応が不十分であったこと、2)専門家による科学的知見の提供が適切になされなかったこと、について、いくつか例を交えて説明されました。そして、これらの課題が原因となり科学への不信感を募らせてしまった社会に対し、再び科学への信頼を構築してもらうための取り組みについてのお話しがありました。欧米諸国にみられるような科学的助言の仕組み(科学的判断と政策的意思決定を区別する、専門家の見解の不一致に対応する、等)が日本には欠けており、リスク等を踏まえた政策判断を迅速かつ的確に行うための仕組みの構築が必要であるとのことでした。

 また、東日本大震災に対する日本学術会議の声明についても言及がありました。この声明では、科学的な助言と政策判断を「峻別する」という認識が表明されており、この「峻別」という言葉が2012年度版科学技術白書で最も注目して欲しかったポイントだと紹介されました(2012年度版科学技術白書のp.103にこの言葉は出てきます)。リスクと利益の比較的観点や科学技術の不確実性の捉え方について考慮し、科学的助言と政策決定を峻別することが大事なポイントだと理解できました。またこのお話の後、実際に科学的根拠と政策決定を峻別するべき事例についてもご紹介いただき、リスクコミュニケーションの話とも絡めてご説明いただきました。

 そして最後は、これらの話から出てきた安全基準についてお話しいただき、レギュラトリーサイエンス領域を政策決定に活かしていくことの必要性や、同時に国民一人一人がリスクを正しく認識することの重要性について触れ、お話しを締めていただきました。

 行松さんの話題提供に引き続いて行われた質疑応答・ディスカッションの時間には、リスクコミュニケーションの課題や、行政が設定する基準値などについて、熱心な意見交換が繰り広げられました。

文:吉田 篤(理学研究科 博士前期課程1年)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員




【案内文】
2018年1月16日(火)に、大阪大学 吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロンにおいて、「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)を開催します。今回のゲストは、内閣府の行松泰弘さんです。
*授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催します。
*この日は、履修登録者以外の方の参加も歓迎します。


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■第37回STiPS Handai研究会
○題目:科学技術「反省」白書にこめた思い
○ゲスト:行松 泰弘 氏(内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 審議官)
○日時:2018年1月16日(火)16:20~17:50
○場所:大阪大学吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロン

○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:件名を「第37回STiPS Handai研究会・参加申込」として、
①氏名(ふりがな)②所属を明記のうえ、stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp
([at]は@にして下さい)までお送りください。

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点