科学と社会の<間>に立つメディア論 「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)(34)開催


 2017年12月19日(火)に、大阪大学 吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロンにて、第34回「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)「科学と社会の<間>に立つメディア論」を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。大阪大学の学生、教職員など11人が参加しました。

 今回は、BuzzFeed Japanの記者である石戸諭さんをゲスト講師としてお招きしました。以前は大手新聞社の社会部で記者をされていましたが、現在は専門を設けず幅広い分野に関してオンラインメディアに掲載する記事を書いておられるそうです。
 まずは、現在のメディア全般に関して、科学とメディアの関係に関して、多様な観点を提示していただきました。

例えば・・・

・同じ事実を見ているのにも関わらず、その報道のされ方や市民の受け取り方にはギャップがあり、その「すれ違い」を見ることができるところにもメディアの面白さがある。

・オンラインメディアの出現により、ここ数年で既存メディアと報道のあり方に関して大きな変化がおきている。記者に求められる能力も基本は変わらないが、変化への対応が求められている。例えば、インターネットメディアでも今までは新しいものをより早く伝える「速報」的な側面が重視されていたが、最近ではそれだけでなく、取材力と分析力がさらに求められる「特集」的な記事にも価値をおくメディアもでてきた。

・ネット上には記事がアーカイブされていくことになる。古いものでも“新しい”ものとして共有されることがある。“新しい”状態を保持することができる分、いつ読んでも古くならない記事を残せるかが問われる。動画という伝え方に関しても、テレビでは一瞬で消費されてしまうが、ネット上の動画配信サービスが提供されているようになり、時間的耐久性が強く求められるようになったともいえる。

・メディアは専門家コミュニティーと市民の中間にあるべきもの。どの集団やどの情報を信頼し、どの事実を伝え、なにが議論されているのか。伝える情報が何か選別する機能を一義的に任されているところがある。

・新聞社の強みとして、組織力が強く記者の教育体制が整っていること、「硬いメディア」として一定のニーズがあることがあげられる。

・メディアとの親和性の有無だけでなく、出るべきとされている領域とそうでない領域がある。その中でどこに取材し、どう報道するかはメディアにかかっている。「出たい」人だけではなく、自分からは出たがらない研究者を発掘できる方が面白い。

・科学や研究分野に関しては、読み手に判断を任せて誤解されてしまうとその研究自体が信頼を失ってしまい、結果として、その分野の不信感や不満に繋がる場合もある。娯楽的な面白さの感覚とは別でとらえられるべきである。

 後半は質疑応答の時間。新聞とオンラインメディアの違いについての話題が多くでました。その一部をご紹介します。

Q.オンラインメディアだからこそ伝わりやすいジャンル、伝わりにくいジャンルというものはあるのでしょうか?
A.オンラインメディアだからこそ伝わりやすいジャンルというのは特にないのではないか。ジャンルというよりも記事の書き方による。伝え方次第なのではないか。記者はクリエイティブな仕事だと思っている。

Q.科学技術や医療に関する話題がメディアに取り上げられる時によく「両論併記」がされる(Aという説もあるけれど、Bの可能性もあるというように)けれど、それはそれで誤解を招くのではないかと思うことがある。
A.両論併記するかどうかは、その話題による。必ずしも併記することが必要だとは思ってない。併記するにしても、50対50で意見が分かれているように書くのではなく、少数意見はあくまで少数意見と明記して書くべきだとは思っている。
 新聞では掲載できる文字数に限界があるので、型どおりの両論併記になりがちなところがあるが、オンラインメディアにはフォーマットが存在しない。文章量にも制限がないため、読み手にゆだねるような「ゆらぎ」を残した記述をすることも可能。
 両論併記を否定する必要はない。両論があると書くのはのはメディアとして一種の「責任の取り方」でもある。

文:三原 明穂(医学系研究科 博士前期課程1年)、「科学技術コミュニケーション入門B」担当教員


【案内文】
2017年12月19日(火)に、大阪大学 吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロンにおいて、「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)を開催します。今回のゲストは、BuzzFeed Japanの石戸諭さんです。
(*授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催します)。

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■第34回STiPS Handai研究会
○題目:科学と社会の<間>に立つメディア論
○ゲスト:石戸 諭 氏(BuzzFeed Japan 記者)
○日時:2017年12月19日(火)16:20~17:50
○場所:大阪大学吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階 交流サロン

○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:件名を「第34回STiPS Handai研究会・参加申込」として、
①氏名(ふりがな)②所属を明記のうえ、stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp
([at]は@にして下さい)までお送りください。

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点