国家公務員からみた「科学技術と社会の関係」 「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)(29)開催


 2017年7月11日(火)、文部科学省の斉藤卓也さんをお招きして、第29回「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)「国家公務員からみた『科学技術と社会の関係』」を開催しました。

 この日の会場(大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構スチューデントコモンズ2階セミナー室A)には、34人が集まりました。STiPSの授業「科学技術コミュニケーション入門B」の受講者だけではなく、文学部の授業「科学史・科学論講義」の受講者、学外からお越しの方など、多様な方にご参加いただきました。
 
 前回のSTiPS Handai研究会と同じように、まずは斉藤さんからのお仕事紹介の時間があり、その後に、少し長めの質疑応答の時間を設けました。以下、斉藤さんのお話の概略をご紹介します。

 まずは、斉藤さんが国家公務員としてお仕事をされるときの根本的な問題意識、そして、日本の科学技術の現状についてのお話からです。「自分の子供たちは、自分たちと同じ生活をできるか。日本に生まれてよかったと思えるか。」こんな問いを日々思い浮かべつつ、お仕事をされているそうです。主要国のエネルギー自給率・食料自給率、人口動態、税収といったデータを示しながら、今の日本が置かれている背景を紹介していただきました。その上で、日本の科学技術行政の仕組み、第5期科学技術基本計画の概要や、現在日本が目指している「Society 5.0」の概略、そして、現在日本の科学技術行政が抱えている課題の概略をお話しいただきました。

 日本の科学技術の課題に対応する政策をつくるにあたり、行政はどのように社会の将来像を描けばいいのか。未来の社会像をあるべき姿を描いた上で今すべきことを考える、というバックキャスト型の政策形成のあり方についてのお話しもありました。またそれと関連して、文部科学省の中に設置された「対話型政策形成室」の紹介もしていただきました。

 後半は質疑応答の時間。多様な角度からの質問が飛び出しました。例えば、「お話を聞きながら、研究者ではない(文系の)私の役割ってなんだろう?ということを考えていました。」というもの。斉藤さんは、「科学技術政策を進める上でも、法律や経済といったいわゆる文系の人になじみの深い社会の仕組みと一緒に考えていくことが大事。実際に、金融関係の人とサイエンスの人が一緒に勉強会をしていたりもするんですよ。」と、文理の壁を超えて科学技術政策に取り組む事例について紹介されていました。

 終了後に学生さんたちが書いてくれた感想には、こんな言葉が並んでいました。「一人一人が技術をただ受け取るだけではなく、先を一緒に考えることは私たちの義務なのではないか、と考えました。」「1つの問題についてもいろいろな角度からのアプローチが必要で、どこかを変えればなんとかなる話ではないのだということを強く感じました。」「産学連携の話題が興味深かった。産学官で議論できるような場を増やしていくとともに社会全体の意識も変えていく必要があるのだろうが、なかなか難しそうだなとも感じる。」

 斉藤さん、ありがとうございました!


【案内文】
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■第29回STiPS Handai研究会
○題目:国家公務員からみた「科学技術と社会の関係」
○ゲスト:斉藤 卓也 氏(文部科学省研究振興局基礎研究振興課 基礎研究推進室長)
○日時:2017年7月11日(火)16:20~17:50
○場所:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデントコモンズ2階 セミナー室A

○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:件名を「第29回STiPS Handai研究会・参加申込」として、
①氏名(ふりがな)②所属を明記のうえ、stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp
([at]は@にして下さい)までお送りください。

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点