科学医療部記者の働き方 「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)(28)開催


 2017年7月4日(火)に、大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構スチューデントコモンズ2階セミナー室Aにて、第28回「公共圏における科学技術政策」に関する研究会(STiPS Handai研究会)「科学医療部記者の働き方」を開催しました(授業「科学技術コミュニケーション入門B」の一環として開催)。

 今回は、朝日新聞科学医療部の小坪遊さんを講師としてお招きしました。この日の研究会には、学生3人と大阪大学教職員5人、計8人が参加しました。台風の影響でお天気が悪く、いつもよりも参加人数が少なくなりました。

 ダニやアリの研究をしていた学生時代から朝日新聞科学医療部に至るまでの経緯を楽しく紹介していただきました。医療系の取材を1年半担当した後、2011年9月からは地震防災の担当へ。そして、2013年から2年間は福島県でお仕事をされていました。2015年からは東京に戻って、環境分野を担当されています。

 この日の数日前は、アラスカで取材をされていたそうです。アラスカ取材の成果の一部は、こちら。
(地球異変)減る氷の堤、浸食される村 アラスカから(2017年6月25日配信)
(地球異変)アラスカの森、広がる「砂漠」(2017年7月17日配信)
 
 この後、新聞記者としての仕事内容を丁寧に紹介していただきました。例えば、取材で「人から話をきく」ときには、次の3パターンがあるそうです。1)研究者にきく、2)役所、政治家にきく、3)ふつうの人にきく。

1)研究者にきく
 「その科学や技術がどういうメカニズムなのか(例えば、iPS細胞はどうやってできるのか、除染ってどうやって行われるのか、など)」、「どのような意義があるのか」、「開発秘話はあるのか」ということをきく。

2)役所、政治家にきく
 「政策決定や実施において、どのような科学的知見や技術を使うのか」、「科学的知見があるにもかかわらず、なぜ政策が行われないのか」ということをきく。現状の制度や関連するエビデンスを調べて記事にすることで、制度や政策が動くきっかけになることもある。

3)一般の人にきく
 「その科学や技術をどう評価しているのか」、「その発見や技術はあなたに何をもたらしますか」、「科学や技術はあなたを幸せにしますか」ということをきく。技術が進めば必ず幸せになるのか、ということも問い直したい。

 「読んでもらえる記事を書く」ということを心がけていらっしゃるそうです。そのために、記事にも遊びの要素を入れたりすることも。ただ、テーマによっては、慎重に書かなければならないものもあります(例えば、患者さんの期待をあおりすぎないように、まだ学会発表だけだ、など)。そして、「科学医療部員である前に、記者である」という気持ちも大事にされているそうです。

 質疑応答の時間には、参加者からの質問に丁寧に答えていただきました。参加者からは次のような感想が届きました。
「科学ジャーナリストという職業が持つ、科学技術の仕組みの理解、より包括的な公共性の見極め、といった使命というものを理解できた。」
「“表現の仕方”について記者の方が心がけていること、というのは、今後自分が“受け手”として新聞記事などを読むときはもちろん、自分が“語り手”となる際にも非常に役立つ内容だと感じた。」


【案内文】
Flyer_for170704

■第28回STiPS Handai研究会
○題目:科学医療部記者の働き方
○ゲスト:小坪 遊 氏(朝日新聞科学医療部 記者)
○日時:2017年7月4日(火)16:20~17:50
○場所:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構 ステューデントコモンズ2階 セミナー室A

○参加:当日参加も可能ですが、できるだけ事前のお申し込みをお願いします。
○申込方法:件名を「第28回STiPS Handai研究会・参加申込」として、
①氏名(ふりがな)②所属を明記のうえ、stips-info[at]cscd.osaka-u.ac.jp
([at]は@にして下さい)までお送りください。

○主催:公共圏における科学技術・教育研究拠点